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№445 夫婦別姓の代償

№445 夫婦別姓の代償
 弁護士は離婚事件など男女の問題も普通に扱う。

 法律事務所にわざわざ来るくらいだから、どの事例も深刻で心の問題に踏み込むことは避けられない。
 男女の問題に法律をもちこむのは野暮なことだが、それでも必要なことがある。縁あって結婚し、いっしょに生活し、子供が生まれ、老後を迎える。男女の関係は人生そのものと言っていいほど、人のあり方に深く関わっている。
 
 だから、男女の関係が崩れていくと、人は傷つくし、それまで築き上げてきた財産の精算だって必要だ。子供がいれば、子供の人生に対して誰が責任を持つかをきちんと決めなければならない。
 家庭を築くというのは相手、子供に対して責任を果たすということでもある。こうした責任を法律は「婚姻」として保護を図っている。入籍するというのは男女の関係について法律が保護を図るというところがある。
 
 この法律の保護は軽くはない。
 
 特に、女性の場合、社会的には弱い立場に立つから、入籍のない関係は女性に不利に作用する。いまでも、女性が家事を分担し、子育てを分担することが多い。少なくない女性が家庭のために職業上のキャリアを犠牲にする。経済的な自立は十分とは言えない。「婚姻」はこうした女性の不利を補っている。
 
 夫婦別姓といのは入籍しない夫婦であることが多いが、妻は法的保護を受けられないことを覚悟しなければならない。
 
 たとえば、長年にわたって入籍しない夫婦があるが、子供がないまま夫が死亡したらどうなるだろう。すでに夫の両親は死亡している。夫婦で築き上げてきた財産、預金、建物、土地といったものが全て、夫の兄弟に相続することになる。
 
 預金が2000万円、不動産が5000万円ほどの財産を築いてきたとしよう。兄弟は嫁には冷淡であることが多い。兄弟は疎遠であったにもかかわらず、全財産を要求することがある。妻は夫の財産を相続できないのである。そのような場合は本当に気の毒としか言いようがない。
 
 夫婦別姓ということで生活してきた夫婦にあって、夫が浮気をしたらどうだろう。
 夫が出て行っても、入籍していれば、法律上同居義務があるから夫は同居した場合に見合うだけの生活費を婚姻費用として渡さなければならない。しかし、夫婦別姓を決断し、入籍がない場合は必ずしも同居義務があるわけではない。
 
 夫婦別姓は、女性も経済的に自立し、別れたって自分一人で生きていける、夫の財産などあてにしないということを前提にしているように思う。夫は夫、妻は妻という自律した個人のあり方として正しいと思う。しかし、現実の女性の置かれた社会的地位からすると、女性は相当の覚悟を持つべきなのである。もちろん、これは現行法の不備という問題でもある。