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№436 タンデムスカイダイビングで死亡した事例

№436 タンデムスカイダイビングで死亡した事例
 この事件はタンデムスカイダイビング体験企画で、パラシュートが開かなかったために、参加者とインストラクターが墜落死した事例である。遺族は、体験ダイビングを企画した会社に損害賠償を求めた。会社は遺族に対し、5400万円の支払うよう命ぜられた(横浜地裁(H21.6.16 判時2062号105頁)。

 スカイダイビングは墜落すれば必ず死んでしまう危険なスポーツだ。そのために、いくつもの安全設備が用意されていて、死亡事故はほとんどない。被害者はこうした実績を信じて。「お年寄りから子供まで」安全に楽しめるスポーツに参加した。

 会社側は、ダイビングは常に危険性を伴うものであるから、安全に地上に戻る結果を保障したものではないと主張した。つまり、安全性が確保できるようするべきことを行う義務があるが、安全に生還するという結果までは保障しないというのである。

 これに対して、判決は「生命身体に重大な支障を生じさせることなく安全のうちにダンデムスカイダイビングを終了させる債務を負っていた」と判示した。

 これは、「お年寄りから子供まで」楽しめる体験ツアーとして募集していること、安全性については会社に全て依存しており、被害者が関与する場面がないこと、危険なものであることが明確である場合は命を賭けてまでダイビングする人は少ないだろうこと、など考慮して、安全に帰還させる義務を認定した。

 つまり、安全に帰還させる義務があるため、死の結果があれば債務不履行責任を負うというのだ。被害者が暴れたとか特別な事情があって、会社に落ち度がないとするならば、それは会社が明らかにすべき事情だというのだ。

 ちなみに、スキューバダイビングでお客が死亡した事例についてはインストラクターの責任は否定されている。このような違いが生まれたのは、スキューバダイビングの場合は、一定程度訓練を受けており、被害者が自分でコントロールできる範囲があるからと思われる。

 中小企業では人のやらない企画を組むこともある。この場合の安全に対する配慮は常に慎重にならなければならない。自分で安全が保障できない場合には、客に十分そのことを説明し、危険を引き受けてもらわなければならない。