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№1936 物納を指導しなかった税理士の責任

№1936 物納を指導しなかった税理士の責任

物納を助言しなかった税理士に責任を認めた事例
 弁護士や税理士は専門家としての助言指導を行う義務がある。事案では相続時の時価より株価が低下しているにもかかわらず物納を指導しなかった点、注意義務違反を認め、担当税理士に2400万円程度の賠償責任を認めた(名古屋地裁H28.2.26判時2321号58頁)。

 本件では遺産合計は10億7732万円、うち有価証券が81%を占めていた。売却が容易なD株は遺産全体の71.4%を占めていた。納付すべき相続税額は4億5141万円となる。

物納にはルールと限度があります
 相続税を支払う際、物納は必ず頭に浮かぶ。不動産などは売却となると譲渡所得税や売買手数料が別にかかってしまう。株でも同じ事だ。不動産などを税務署が引き取ってくれれば物の売却に伴うこうした諸費用を支払う必要が無い。

 相続税法40条は「相続税額を延納によつても金銭で納付することを困難とする事由がある場合において」可能としている。物納許可限度額は「納付を困難とする金額」つまり、税額から現金納付可能な金額を差し引いた金額とされている。

 物納については順序があるが、不動産や上場会社の株式などは第一順位とされている。物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額になる。

  タックスアンサー(国税庁) →    https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4214.htm 

遺産を売って支払うか、物納するか、それが問題だ
 ところで、死亡時から株価がどんどん下がっているような場合など確定申告時の評価額より、実際に納付時期の株価が低かったら、物納の方が得だ。上記事例は、株価が下がっているのに物納のアドバイスをしなかったことが違法であるとされた。

税理士の責任のレベル
 税理士の責任について、判決文では「委任者の説明内容や関係法令、制度を適切に確認、調査の上、委任者において適正な納税を行い、かつ、最も利益となるように申告手続き及び納付手続を行うべき注意義務、そのための助言指導義務を負っている」としている。      

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