名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№227 労使見解の時代的背景

№227 労使見解の時代的背景
 中小企業家同友会の労使見解は1974年にまとめられた。それは1970年から4年間にわたって討議されまとめられたものだ。当時,70年安保闘争があり,労働組合運動は活発に展開されていた。「総資本 対 総労働」という言葉もあり,労使の関係は先鋭化していた。中小企業にあっても,組合が結成され,赤旗が立ち,ストが決行されていた。

 労使見解はそうした激しい対立の中,労働者の権利を尊重すると宣言した。労使見解の本当の意味を理解するためには,これが激しい労働争議が起こっている中での使用者のよりどころとして宣言された点を理解しなければならない。当時の中小企業家同友会の会員は,相手を敵視せず,権利あるものとして正当に立ち向かおうとしたのである。

 中小企業家は全てのことを行わなければならない。多くは一人で解決しなければならない。必ずしも専門家ではない。経営学会計学の知識がある訳ではない。それでも,対等な当事者として,相手のいいなりにならず,相手の権利も尊重するという難しい作業はやらなければならない。

 それはどういう作業かというと,経営者として自分はどのように会社経営を持っていくかをあきらかにし,実現可能な労働条件,実現不能な労働条件を根拠をもって説明するという作業である。相手は必ず分かるという,性善説に立ち,とことん話し合っていくという態度だったのだろう。

 実際,同友会内では労働者に対する会計の公開に踏み切っている事業者もいる。全てとは言わないが,企業の情報を開示し,社長としての企業の行く末の指針を示すということだ。社長が賢く,社員に誠意があれば,理解されるだろう。と信じることだ。