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№182 準備金は25%?

中小企業法務 №182 準備金は25%?
 ある企業の話だが,新しい会計士に資本準備金がかなり上回っているので,縮減してはどうかというアドバイスを受けた。というよりは,資本の25%まで下げなければならないということなのだ。実はその意味がよく分からない。

 会社法から言えば,資本準備金については剰余金の関係での下限の制限はあっても,上限の制限はない。企業会計原則も調べてみたが,どうも25%でなければならないというような制約はないようだ。税法上の問題があるのだろうか。何しろ,税務署は内部留保金に対しても課税していくということで(特定同族会社が対象だが),中小企業がお金をためてはいけませんという政策をとっているようだからこっちの方からの制約があるのかも知れない。

 会社法は資本と利益のとの区別を取り払い,横断的に配当可能な利益を考えるようになった。会社にためられるとの建前になっている資本は企業会計上の処理で保全しようという考えから,それを緩和する変わりに,帳簿類を公開して透明性を確保することによって保全しようと言う考えに変わってきた。そのために,いろいろ分からないことが増えている。

 会計には,「商法」会計,企業会計(「証券取引法」会計),「税務」会計,「公開株式会社法」会計と会計がいろいろあって,それぞれ資本と利益とは厳格に区別されていた。しかし,会社法はその区別をかなり取り払ってしまった。その結果,それぞれの「会計」の統一性が薄れてしまった。法律,企業会計,税務などそれぞれ分野から考えないと訳が分からないのだ。

 そのため,税理士さんの「資本準備金を資本の25%にしなければならない。」というアドバイスに対して,よく分からない状態になっている。法律の建前から言えば,別に準備金が多くたってよいように思う。企業会計からしてもどうも多いことは問題はないようだ。あとは,税法上何か問題があるかどうか検討することになるが, 余り問題がないように思われる。

 尚,本当に資本準備金を取り崩すのであれば,株主総会,債権者異議手続きが必要になる。これは簡単なように見えてけっこう面倒くさい。特に原則として知れたる債権者に通知しなければならないのは会社としても不安だろう(但し,官報に加えて電子広告するなどの場合は例外がある)。