名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№181 資本準備金

№181 資本準備金

 会社法には資本,資本準備金利益準備金,任意積立金とある。
 商法から会社法に移って,資本金の役割はかなり小さくなった。最低資本金制度が廃止されたし,新株の引き受け,払い込み,給付担保責任もなくなってしまった。そうなると「資本」と言ってもどんな意味があるだろうかと思う。

 確かに,従来,小さな会社は資本金とは言ってもそれで信用がかならずしも決まるわけではなく,不動産や預金などの財産の有無,キャッシュフローの状態などによって信用が決まっており,資本,資本準備金にどれだけの意味があるかよく分からなかった。

 ところで,「資本」という用語は,会社法で言う資本と会計原則からくる資本とはどうも意味が違うようだ。

 会計原則の考えでは「資本と利益の区分」は厳格だ。企業会計は「損益計算の構造自体が実現主義の原則、発生主義の原則、および原価主義の原則等にささえられた処分可能利益計算構造であり、その枠...内.での経営成績表示を目的とするもの」と考えており,処分可能な利益と,処分が拘束される資本とは厳格に区別しながら組み立てられていた。

 一方で,会社法資本準備金などを取り崩して配当可能となったし,自己株式の取得もかなり自由化されてしまい,資本部分についての実質的な配当も可能となってしまった。配当の財源が利益であれ資本であれ、両者を区別しないという「横断的」な発想になってしまった。企業会計の立場からすれば,ひどじゃないか,「処分可能利益」がちゃんと分かるようにこれまで苦労してきているのになんだということになるのだろう。

 しかし,中小企業実務の立場からすると,そもそも,「資本」がそんなに厳格なものだったかということになる。会社を設立しても,見かけ上最初は出資があっても,すぐに引き出されてしまうことなんてのはよくある話だ。資本,資本準備金といってもそれに対応する財産が本当にある訳でもない。