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№469 DES(Debt Equity Swap)=債務の株式化

№469 DES(Debt Equity Swap)=債務の株式化
 税理士さんとの勉強会に出席しているが、DESが話題になった。これはかなり難しくて私にはよく分からない。
 
 デット・イクイティ・スワップ(DES)というのは、債務を放棄してもらう代わりに株式を割り当てる方式を言う。正確には債務の放棄という利益をもって、現物出資して株式を割り当てる。不利益の放棄は利益になるが、それを引き当てに新株を割り当てるものだ。
 
 債権者が資本参加する分だけ、債権者にもメリットがあるし、債務者にとっても銀行などとの関係を継続できるメリットがあると言われている。
 
 事業再生にあたって、DESを利用できるのは、株式自体に魅力があるような大きな企業だけだろう。中小企業には余り関係はないかもしれない。
 もっとも、会社の債務を減らして、資本にするから、会社全体の財務体質は改善する。その場合には融資などに有利に働くと思う。
 また、社長の会社に対する債権、親族の会社に対する債権をもって現物出資して資本化しておけば、相続の時に助かるかもしれない。債権は額面額で評価されるが、株式であれば相続税評価通達による評価が可能となって、評価額が下がる可能性があるからだ。
 
 DESに当たって最も難しいのは「債権の価値」をどのようにとらえるかである(注1)。株式が交付されるのであるが、実際には債権放棄と同じだ。債権放棄することで、債務者(再生会社)には免除益が出てしまう。免除益が出るとこの部分に課税されることになる。(経産省では平成22年1月「事業再生に係るDES研究会報告」を出している。)
 
 一般に債権を評価する場合は次の方法がある。
 ① 合理的な評価基準に基づいて算定する価格
   これは、結局のところ、債権者と債務者との回収可能額についての合意を基準とすることになるのではないだろうか。
 ② 債権の流通価格
   しかし、流通債権はまれだ。そもそも、債権者が取得価格を明らかにするはずがない。
 
 東京地裁平成21年4月28日判決では債権を時価評価し、時価と券面額の差に課税されることを容認した。この時の時価は債権者の取得価格(帳簿価格)である。この判決はDESに関する議論や制度が不十分だった頃の事例である。
 
※ 注1
 税務上「債権の価格」については、券面額評価、時価評価、法人税法62条の4で規定される帳簿価格がある。
※ 注2
 完全子会社などいわゆる適格現物出資して、DESを行う場合については、簿価による処理を認めており課税対象から外している(法人税法2条12号の14、法62条の4第1項)。