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№468 取得時効

№468 取得時効
 土地を時効で取得できるというのは、よく知られている。通常だと10年間、占有を続けると時効取得の対象になる。他人の物だと知ってて占領し続けても、20年間経つと時効で取得できることがある。若い人には10年の言うと長い期間だが、私たちからするとあっと言う間だ。
 
 実務的には土地境界問題に関連してよく取得時効が出てくる。例えば、境界付近に倉庫を置いたというときに土地境界があいまいになる。境界付近に使われなくなった水路があって、いつのまにか隣の家の庭になっていたということもある。工場の敷地だと思っていたら、うちの土地だなどと言われることもある。
 
 都市部であれば、境界ははっきりしている。しかし、都市から離れるに従って境界の問題はあいまいだ。そんな時に、いったいどこからどこまで占有していたかが境界の目安となる。境界というのは所有権の境みたいなところがあって、使っていないのなら権利はいらないんだ、権利はないんだと事実上の推定が働いてしまう。境界はよく分からないけれど、ともかく、時効で取得しているから文句を言うなということだ。
 
 もうひとつ、実務上よく問題になるのが相続だ。相続しても登記しないで長く放置することがある。自宅が50年前に死んだおじいさんの登記名義のままになっている、なんて話は田舎ではめずらしいことではない。まして、山林になると、戦前の登記が残っていることもある。
 
 こんな時には取得時効を利用することがある。判例は相続を原因とした取得も、取得時効の原因としているからだ。50年も自分のものだと思っているのに、突然、未分割財産だから遺産分けして欲しいなどと言われても対応が可能だ。