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№2102 不動産,成りすまし詐欺

№2102 不動産,成りすまし詐欺

なりすまし詐欺はこんな風
  ここのところ不動産詐欺,なしすまし詐欺が増えているようだ。本人になりすまして,偽の住民票,あるいは偽のパスポートを使って本人になりすまして不動産を売却する手口だ。

 なんで,そんなことが,と思うかもしれないが,不動産取引は1回切りのことが多い。昨日までどこのだれかもわからない人と取引しなければならない。それだけに相手のことがわからない。

 「この方が所有者さんです。」と紹介されて,住民票やパスポートなど見せられてしまうとそうかなと思ってしまう。不動産仲介業者,司法書士なども仕事慣れしてしまって書類があるだけで信じてしまう。そのプロセスは意外とずさんだったりする。

 不動産は額が巨大なだけに,詐欺師や暴力団などがからむことが多い。弁護士も不動産取引に関与するときはかなり神経を使う。

でも,弁護士が関与しても騙されてしまう
 東京地裁の事例(H28.11.29判時2323号78頁)は弁護士もだまされてしまった事例だ。
 不動産取引では権利証(登記識別情報)が無くなった場合,本人確認情報を作成するという方法で権利証に代えて登記手続きを行う(不登法23条4項1号)。

 この事件では弁護士は本人確認情報では住民基本台帳カードが偽造されていた。なりすまし犯は生年月日も言えたし,干支も言えた。不動産登記規則72条2項1号は住民基本台帳カードを提示する方法で本人確認するよう求めていることからすれば,偽造文書が提示されたような場合にまで責任を認めるのは酷かもしれない。

 しかし,本件では相続開始日つまり故人が死亡した日が食い違っていたり,2億4000万円という高額な金額が現金取引されたり,不自然さな点が多くあった。この不自然さからすると,書類の提示だけで本人確認したというのは甘すぎるというのだ。

 この弁護士は30万円で本人確認情報を作成したのであるが,1億6000万円の賠償が命じられた。

 本人確認違反では司法書士の賠償責任が認められている。司法書士は不動産登記を実務的に行っているので弁護士よりも詳しい。私の場合,登記事務への関与はリスクが高いので原則として行わない。

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