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№171 銀行の説明責任

中小企業法務 №171 銀行の説明責任
 
 銀行は顧客に対して説明責任を有する。この説明責任とは何のだろうか。

 銀行法12条の2,第2項では「銀行は、内閣府令で定めるところにより、その業務に係る重要な事項の顧客への説明、その業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱い、その業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならない。」としている。

 これを受けて,銀行法施行規則13条の7は「銀行は、その営む業務の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえた重要な事項の顧客に対する説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置(書面の交付その他の適切な方法による商品又は取引の内容及びリスクの説明並びに犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。以下同じ。)を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備しなければならない。」

 法律の条は一般の人が読むのはめんどくさいことだろう。つまり,銀行には説明責任があり,そのための体制を組んでおかなければならないということだ。
 金融庁によると,説明責任の内容は契約時点における説明責任と,取引関係見直しに関する説明責任がある。はじめと,途中,終わり,それぞれに説明責任があるということだ。ここから本人確認とか,連帯保証の意味なども説明しなければならないとされてくる。
 
 中小企業法務にとって興味深いのは取引関係見直しに伴う説明責任だ。以下の場合には銀行は説明しなければならないだろう。
    ① 金利の見直し、返済条件の変更、担保追加設定・解除等の場合
    ② 顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合
    ③ 延滞債権の回収(担保処分及び個人保証の履行請求を含む)、債権譲渡、企業再生手続き(法的整理・私的整理)及び保証人の個人再生手続き等の場合

 ところで,説明責任であるが,ただ説明というだけではだめだ。「責任」とある以上,納得の過程が不可欠である。銀行は「これまでの取引関係や、顧客の知識、経験及び財産の状況に応じ、かつ、法令に則り、一連の各種手続きを段階的かつ適切に執行するとともに、求めに応じ、客観的合理的理由を説明」しなければならない。

 昨今の,貸しはがし貸し渋りについて,これは基本的には顧客と銀行とのやりとりの問題である。何をもって貸しはがし貸し渋りとするかは非常に難しい。しかしながら,こうした説明責任を活用することによって,銀行を追いつめることができると思われる。