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№1762 競業他社による顧客の略奪

№1762 競業他社による顧客の略奪

 普通にはない話だが、競業他社が顧客を丸ごと奪うことがある。たとえば、取締役及び幹部を数名引き抜いた上に、顧客の事業部を奪ってしまう、あわせて当該会社の違法行為を内部告発させて営業停止に追い込むというようなストーリーがありうる。営業停止までさせるとなると相当な準備が必要だが、幹部を引き抜いて顧客を丸ごと奪うというのはそんなに珍しいことではない。

 こうした問題については、事前に動きがあるので顧問弁護士としては防衛的な対応策を打て行く。動き出すと日々情報が入ってくるため事態が急速に進んでいくので対策は常に緊急を要する。顧問弁護士としては日頃の顧問料が成果を生み出す機会ということになる。

 さて、顧客を収奪する行為は通常は自由競争の範囲なので営業でやられたら営業でやり返さなければならない。しかし、取締役を多数引き抜くなどとは通常の商道徳からすれば到底許されない。通常はこのときに会社の顧客情報やさまざまな情報を盗み取っていく。顧客に対しては事前に事業を移すことを伝える。時にはこの事業部は廃止になって新しく引き継ぐことになったなどとうその情報を流して顧客を奪い取ることもある。

 取締役は会社法上会社に対して忠実義務があることから、現職中にこのような行為をすることは背任罪となる。当社が廃業になるなどとうそを言って顧客を奪う行為はある意味偽計による業務妨害罪も視野に入れることになる。預かっているパソコンなどを奪えば横領となル可能性がある。パソコンの中に業務秘密に属するものがあれば不正競争防止法違反が検討対象となる。

 こうした動きに対する対抗手段として独占禁止法不正競争防止法違反が最も重要な検討事項となる。

 独占禁止法19条「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と定めている。何が不公正となるかについては公正取引委員会ガイドラインを提供している。

 これは一般的な取引慣行からして著しく逸脱するような場合であるが、その中に「競争者に対する取引妨害」というのものがある。会社幹部及び従業員を引き抜き、さらには顧客に対して部門が移ったかのような宣伝をするような場合にはこれに該当すると思われる。

 不公正な取引に対しては公正取引委員会が捜査し、差し止め、排除などの是正を命じることができる(20条)。また、これにより著しい損害が生じる場合には差し止めを求めることができる(24条)。実際、駅前のタクシー待合場において、妨害行為をしたあるタクシー会社がこの条文により妨害行為の禁止を命ぜられている。独占禁止法は禁じ統制力が強化されているので公正取引委員会を活用することは有益だろう。

 こうして独占禁止法違反、裁判所による不正行為の差し止め、さらには刑事告訴と打てる手立てを順次つけていくことになる。

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