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自由診療ってどこまで自由?

自由診療が増えてきました

 日本では公的医療保険制度が発達しており,保険制度の適用のない自由診療というのはどこまで「自由」なのかよく分からないところがある。しかし,美容外科や美容皮膚科が一般標榜科目になって以降,自由診療領域が増えている。歯科医においても競争の激化から自由診療を経営上重視する医院が増えて生きている。コロナ禍ですっかり低調になってしまったが,外国人,特にアジア系外国人が日本の高度な医療を求めて治療に訪れるという例もかなりあった。  

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医療保険制度の契約関係

 医療保険制度は医院,病院などが国に代わって医療を現物に提供するという考えで制度設計されている。診療契約は医師と患者との間で締結されるが,診療報酬は保険制度から支払われる。健康保険組合など保険者はいわば患者に代わって診療報酬を支払う仕組みになっている。このような仕組みを私法上説明するのは難しいが患者ちおう第三者のために医療を提供する契約ということになろうか。

 

自由診療契約自由の原則があてはまります
 これに対して自由診療は医師と患者との直接的な契約となる。患者は治療費を支払い,医師は医療を提供する,当事者間には契約自由の原則が当てはまるため,治療費の設定も,治療内容も「自由」ということになる。もちろん,医行為であるからには医療法,医師法,看護師法,医薬品医療機器等法など規制を受ける。

 

契約内容の特定に注意しなければなりません
 「美容」などは患者の主観的願望を満足させる医療行為であって,医学的必要性,緊急性が乏しい場合が少なくない。そのため,契約の目的,「主観的願望」について明確に説明する必要があるし,記録に残しておく必要がある。契約目的を明確にしておかないと,シミが残る,二重まぶたがうまくいかないなど対応に困るトラブルが発生する。また,美容整形のための海外の素材や特別な機械を導入する場合などは特に注意を要する。

 

一般診療以上にインフォームドコンセントが重視されます
 要するに自由診療の領域は一般的になじんでいる保険診療とは異なる部分があるため,その異なる部分の説明と同意がさらに厳しく要求されている。経営上自由診療を重視する医師,歯科医についてはインフォームドコンセントに注意を要するか,説明内容について分かりやすく文章化して患者のサインしてもらう必要がある。つまり,患者の同意書は医療過誤においては治療リスクの説明に重点が置かれるが,自由診療の場合は,あえてこの治療を選択したという積極的理由が説明されなければならない。

 

消費者契約法,景表法,不正競争防止法などにも注意を要します

 自由診療関する陥りやすい問題は消費者法との関連である。一般に自由診療は高額であることが多い。適正価格について患者の情報が乏しい。通常の診療のように,医療行為の必要性,緊急性が少ないため,患者には十分な考慮の機会を与える必要がある。これらの怠ると消費者契約法によって無効とされてしまうリスクもある。また,公告宣伝に際して,効果を過大に強調したり,不利益な事実を隠したりする場合は消費者法だけでなく,景表法や不正競争防止法違反ということもありうる。

 

弁護士との相談も有益です

 自由診療を経営上展開する場合についてはこうした,医師・患者の契約関係上の問題点を弁護士などと相談してよく整理しておく必要があるだろう。

 

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