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№2151 患者からの不当なクレーム

№2151 患者からの不当なクレーム

 当事務所は病院関係の顧問も引き受けている。患者からのクレーム対応をどうするかも顧問契約のうちとなる。病院のクレームは健康や生命にかかわるので小売業者の顧客クレーム対応とは異なった面を持つ。

クレーム対応の基本
(1) 法的枠組みから考える
 現場では処理しきれなくなったような不当要求に私たちが接する場合、まず、顧客との法的関係がどのようなものであるかを念頭に入れる。法的義務の範囲であれば、正当なクレームなので反社会勢力であろうと変なひとであろうと義務の範囲であれば応えていくし、義務の範囲外であれば断る。これが基本だ。

(2) 事実関係の確認が重要
 法的枠組み考えるにあたっては事実関係の確認がきわめて重要だ。クレーム対応では激しい思い込みや、いんねん類いがあるので、冷静に丁寧に対話し、事実関係を整理するだけで解決してしまう場合もある。事実関係を整理し、法的枠組みを超えてもなお要求してくるのであれば、当然断る、相手にしないというのが基本になる。

(3) 政策的な判断
 この基本に、あとは政策的な判断が加わっていく。いわゆる「誠意」と言われるものだ。この誠意は、本来の義務の範囲を超えて要求に応じたり、義務の範囲であっても対応のために時間を割いていく、時には院長が対応するなどの行動が加わる。病院の社会的信用や職員の保護などいろいろな考慮が働いていく。

病院・医院と患者の法律関係は準委任契約
(1) 準委任契約
 医師と患者の関係は準委任契約と呼ばれる関係だ。「準」とついているのは引き受ける作業が医療という事実行為、つまり売買契約の締結などといった法律的な業務とは異なるため「準」とつけられている。

(2) 応招義務
 一般に契約は自由なので本来はいやな患者を引き受ける義務はない。しかし、医療の場合、生命に関わる問題なのでそうはいかない。医師の倫理からいって患者を放っておくことはできないし、法的にも医師法19条1項は「正当な理由」なくして拒むことができないとしている。保険医であれば保険制度の担い手として医療を提供する義務がある。

 診療契約は契約なので医師と患者は対等な関係に立つ。しかし、実際には治す側・治される側というものであるため、医師の立場の方が強いと言われている。そのため、診療契約では説明と同意、いわゆるインフォームドコンセントが重視される(医療法1条の4、2項)。医師は治療をするだけでなく、説明も義務づけられている。

(4) 限界事例の検討
 こうして、医師には公人として医療を提供しなければならないという義務と、インフォームドコンセントという説明責任の縛りがあって、特殊な面が存在する。どこまでが説明責任を果たしたと言えるか、どこまでもクレーマーに付き合わなければならないかはケースバイケースであり、弁護士と相談していただくことになる。

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