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№2404 「高収益事業のつくり方」を読む(1)

 稲盛和夫著,「高収益事業のつくり方」を読んでいる。これは,中堅,中小企業の経営上の悩みに対して,著者がそれに答えるというQ&A方式の本で企業が具体的にかかえる悩み,体験が語られおもしろい。第二章は「挑戦し続ける企業をめざす」だ。

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「企業とは本来,永続的に成長し続けるものです。」 
 この章は「企業とは本来,永続的に成長し続けるものです。」という言葉で始まっている。人が目的をもって集まり,組織ができあがった以上,組織は生まれながらに使命を持っている。人は本来成長を目指すものということであるならば,「企業は本来,永続的に成長し続けるもの」と言える。

 

経営基盤の確立こそ第一

 企業が特定のマーケットでシェアを占め,一定の持続性を持っている場合,どこかで限界に達することが多い。この限界をどのようにしたら破ることができるだろうか。本書はまず「揺るがない経営基盤を備え,経営者が人並みはずれた情熱を持つと同時に,どんな些細なことでも真剣に判断できるようになれば,いつまでも中小企業のままでいる必要はありません」(72頁)と説く。裏を返せばまず自社の状態にこのような堅実かつ前向きな経営があるかを問い直せという。

 ①経営基盤,②成長への飽くなき情熱,③五感の全てを動員して感じ取る力(有意注意)の大切さを説いている。

 

 そのため,経営者からの相談Q&Aでは,ある小売業の店舗拡大に対するアドバイスにこのように答えている。出店で無理に売上を増やすより「今まで出店された店舗の収益力を向上させていかなえればなりません。」(82頁)。そして,ダイエーを引き合いに,既存店舗の赤字を放置したまま拡大を急いだダイエー拙速さの「轍を踏まぬよう,既存店舗の採算を確保することが急務です」(83頁)と述べている。

 

「技術の延長線上に,多角化を考えました」

 こうして経営基盤の整備ができれば,多角化に入る訳だが,「京セラがまだ中小企業だった頃,私は自分の得意とする技術の延長線上に,多角化を考えました」(72頁)。「現有する資源を活用することができ,シナジー効果も期待できる」という。


 全く,その通りだと思う。Q&Aでは自動車試作品メーカーの問いがある。この会社は常に新しい技術を取り入れ発展してきた。経営基盤を盤石にした上で,多角化を試み「わが社の得意とする自動車業界において,材料置換という新分野で技術を伸ばすことにしました。つまり,部品の素材を金属から有機材料へ,あるいは有機材料からセラミックへ転換するなど,同一分野における技術の拡張策をとったのです。」(108頁)

 

 このQに対し,稲盛氏は「非常に手堅いと思いますので,その方向で多角化を進めていかれればよいと思います」(116頁)と答えている。さらに,新分野への進出に際して,「自社の能力は未来進行形で捉える」ことの重要性を付け加えている。つまり,新技術ができない理由はいくらでも述べることができる,「リーダーは,高い目標を掲げ,自分たちの能力を未来進行形で捉えることが必要です。」と言う(119頁)。

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