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№2403 コロナ禍リスクに民法はどう応えるか

 新コロナ,大型台風,地震,頭の中で想定されても実際に起こってみると「ここまでになるとは」と想定外の事態に頭を抱えることになる。

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自粛と言っても強制と同じじゃないか

 ところで,新型コロナ感染で政府は自粛といい,自己責任で処理せよと言う。休業した場合の納期の遅れなどは自己責任なので自社が負わざる得ないという論理になってしまう。ショッピングモールの飲食店の場合,自粛要請に対して自発的に休業するのだから,損失は自己責任だ。休業しても家賃は払わなければならない。

 しかし,自粛と言っても社会的圧力にさらされるのであるから,自己責任で決断したとは言いがたい面がある。新型コロナによる社会手的圧力は個人や企業の自主的努力ではどうにもならない領域があるのだから,関係者は平等にマイナスを負担するべきだという考え方が出てくる。

 

帰責事由を考えてみよう

 こうした問題を私たち法律家は「帰責事由」という考え方で処理している。つまり,自分たちの責任がある領域,自分たちのコントロールの届く範囲はやはり自己責任の問題であるため,責任を負わなければならない。一方で,コントロールの及ばない範囲の問題は責任がある。新型コロナ感染により休業し,納期が遅れるような場合に,感染を防ぐことができたり,代替措置がとれる状況にあれば納期に間に合うのだから責任は免れない。しかし,やれることはやったというのであれば,それはもう災難,人智の及ばぬ領域なので責任はないということになる。

 

危険負担を考えてみよう

 また,こうした災害や新型コロナ禍は時に「危険負担」という考え方で処理される。
 例えば,民法611条では「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益することができなくなった場合」で,賃借人に帰責事由がない場合には賃料の減額を求めることができると定めている。旧民法でも同様の条文があるが「滅失」の場合に減額できるとしている。コロナによる経営自粛は新民法にいう「滅失その他の事由」に該当するかどうかというような問題なる。

 

コロナ社会での経営自粛に家賃減額を求めることができるか

 新型コロナによる社会的な圧力は半端ではない。ショッピングモールが閉店を決めてしまえば当然閉店しなければならないし,ソーシャルディスタンスと言われれば席を半分にしなければならない。店は使えるけど,使えない。半分しか使えない,「これって自己責任?」。社会公衆衛生上の危機であれば災害と考え,関係者は平等に責任を負担するべきだろう。そうであるなら,コロナ禍,店が利用できない状態は,「損壊」と同等の意味で使用不能なのだから民法611条により減額を認めてよいように思う。

 

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