かつては反社会勢力や過激な労働組合などが会社を取り囲んだり,交渉と称して乗り込んできたりすることがあったが,最近はすっかり減ってきた。最近は組織的というより,個人的にSNSを利用した誹謗中傷や脅かしの類いが出てきている。インターネットというのは不思議なもので,普段は気にしないが,ひとたび嫌がらせ記事などが掲載されると気になって仕方がなくなるようだ。弁護士への相談はこうした違法行為対策は当然あるが,心の平静を保つにも有効だ。
ストーカー防止条例
つきまとい行為でまず思い浮かぶのがストーカーだ。ストーカーというのは法律用語で,「ストーカー行為等の規制等に関する法律」という法律で,「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」は禁止されているし,「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。」なども禁止されている。名誉を侵害したり,脅迫めいた行動もこの法律で規制される。
迷惑行為防止条例
各都道府県などでは迷惑行為防止条例が定められており,販売目的などでつきまとったりする行為がどの都道府県も似たり寄ったりだと思うが,愛知県の場合,痴漢行為や盗撮,押し売りや客引きでつきまとう行為はなどは条例違反となる。この条例では単純につきまとうというだけでは違反とはならない。
SNSでの誹謗中傷
この類いの事件は増えている。誹謗中傷する内容の記事が掲載された場合は,まずは記事をプリントするなどして証拠を押さえておく必要がある。刑事的には名誉毀損罪,業務妨害罪などが考えられる。民事的にはSNS管理者に削除要請をする。この削除要請については比較的簡単に応じてくれるというのが私の印象だ。プロバイダ責任制限法4条は被害者による発信者の身元確認請求を認めている。これにより発信者を確認し,民事,刑事の法的責任を追求することになる。
刑法
このほか,刑法などの活用も考えられる。退去を求めても帰らない場合は不退去罪となるし,何かを執拗に求める場合には強要罪にもなる。痴漢行為も度が過ぎれば強制わいせつ罪にもなる。
このうちよく問題になるのは住居侵入罪(不退去罪)だが,そう簡単ではない。日常的に人の交渉は許容される部分がある。ともかくつきまといというめいわく行為を受けた場合,何度も出て行くように求めることが肝要だ。警察を呼ぶのに躊躇する必要はない。警察は簡単には取り扱ってはくれないが,警察に頼ることはその後のエスカレートを防ぐ手立てにもなるし,実際に刑事告訴という時に過去に警察沙汰になっていたというのも悪性を基礎づける証拠となる。