№1929 自力救済は禁止
自力救済は禁止されている。
権利があっても、無理矢理権利を実現する行為は禁止されている。法律用語では自力救済行為の禁止と表現される。
たとえば
■賃料を滞納している住民に対して、無理矢理引きづり出す行為は禁止だ。
■夜逃げした賃借人の荷物を勝手に捨ててしまう行為も禁止だ。
■倒産しかかった会社から無理矢理納入物を持って帰ってしまうことも禁止だ。
■別居中の父親が、子供を無理矢理連れて行く行為も、それがたとえ親権者であっても違法行為となり時には誘拐罪を構成する(最高裁H17.12.6判時1927号156頁)。
最高裁は例外的にしか許さない
最高裁は「法律に定める手続きよったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合のみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」としている(S40.12.7)。これはかなり限定的で自力救済が許される場合はめったにないと言える。
自力救済事例に対する弁護士の対応
しかし、そうは言っても裁判所の手続きは遅い。自力救済が必要な場合にはどうしたらいいだろうか。弁護士としてはどのように対応したらいいだろうか。
① まず、依頼者には自力救済が禁じられていること、無断で捨てれば毀棄罪、無断で持ち出せば窃盗罪、無断で連れ去れば誘拐罪などの犯罪にもなりうることを説明する。
② 次に、相手が説得に応じて対応するならば許されると告げる。その場合、権利者の了解が必要だ。今すぐに現場に行ってその場の「気合い」で説得するんだ、と説明する。
③ 法律上の手立ては可能な限り打っておく。たとえば、「物を売る場合は代金納入時に所有権が移る」というような所有権の移転時期を工夫する。契約条項としては無効となるかもしれないが、賃貸借契約に「残留する動産類の処分を貸主にゆだねる」という条項を入れたりする。
④ さらに、仮処分と言って平行して裁判所に緊急措置か可能となる手立てを打っていく。
⑤ 生命、身体の危険があるような場合には警察との連携は不可欠だ。
これは非常に難しい判断で、弁護士によって違う。若い弁護士には難しい判断だ。経験を積んでどこまで許されるか真剣に考えた弁護士ですら難しい。まして、一般の人は必ず弁護士に相談すべきだ。
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