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№2392 労災に対する元請けの責任

安全配慮義務

 雇用契約では使用者は労働者の心身の危険から保護する義務がある(最判S59.4.10、判時1116号33頁)。これを「安全配慮義務」と呼んでいる。使用者の指示に従って危険な場所で仕事をするのだから、使用者に安全確保する義務があることは当然だ。

 この安全配慮義務は請負契約であっても元請けに認められることがある。(最判S50.2.25判時767号11頁)。最近は下請けの形態も多様化し、工場のライン全部を下請化している例がある。そのため下請け形態に合わせた労災配慮が必要となる。

 請負契約書など安全配慮義務ついてあらかじめ整理しておくことが有効だろう。

 

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元請けも安全配慮義務を負うことがあります

 ところで、二次、三次と下請けがある場合、最近、上の方の発注業者にも安全配慮義務があるという判決が出た(東京高裁H30.4.26、判時2436号32頁)。高さ5mの樹木を剪定する作業中に転落して全身の機能が害された事例だ。1級と認定されているので寝たきり常体ということだろう。

 

若い職人の未来を奪った事故

 被害者はまだ若く高所での経験は浅かった。原審は3点支持法を十分指導しなかったとして、下請け業者の安全配慮義務を認めた。しかし、元請けには認めなかった。ところが、東京高裁は「二丁掛け」安全帯を指導するべきだったとして、元請業者(第一次下請け業者)にも責任を認めた。

 

労働安全衛生規則は安全配慮の重要な基準です

 本件で決め手となったのは労働安全衛生規則の高所(高さ2m以上)作業に関するルールだ。
 ① 第一次義務(作業床の設置)
 ② 第二次義務(安全帯の取付設備等を設け常時使用させること)
 ③ 第三次義務(作業の中止)

 控訴審は第二次義務違反として二丁掛けを選択すべきであったとしたのである。
 原審は二丁掛けは造園業者間では一般的では無かったとしたが、控訴審はそのような事情よりも安全性が優先するとした。

 

特別な社会的接触関係

 控訴審は第一次下請け業者さらには元請業者も被害者に対して責任があるとしてる。
 持つ受け業者には「安全指示書のやりとりや安全衛生の手引きの交付によって・・安全帯の着用、使用に関する指示を具体的に行い、かつ週に2回程度訪れて遵守状況の確認を行っていたものであり」、孫請けの従業員と「特別な社会的接触の関係を肯定するに足りる指揮監督関係があったということができる」とした。

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