名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№36 中小企業法務指針 その2 所有と経営の分離

 商法が改正されて会社法ができあがった。法人設立はほぼ完全に自由化され,株式会社は中小企業向けに組織設計ができるようになった。
 中小企業の特徴は所有と経営とが未分離である点だ。社長は会社の全てを行わなければならない。会社は社長の考え,決断によって大きく左右される。従って,中小企業法務にあっては一般的な企業法務とこの点区別されなければならない。中小企業法務では会社の社長の決断が応援されなければならない。
 例えば,企業コンプライアンスという言葉ある。これはコンプライアンスに関する会社の企業宣言から始まり,企業の管理体制,社員教育など様々な制度が考案されている。中小企業にあっても当然,コンプライアンスについての一般的な体制は必要だ。だが,経営と社長とが密接に繋がっている中小企業にあっては,コンプライアンスの体制は簡略化され,問題は社長の決断にかかっている。例えば,赤福のように賞味期限切れが恒常的に行われているような場合,それは会社の体制もあるが,社長の甘い考えが背後にある。社長はいかなる場合も顧客をだましてはならないという決断ができなかったのである。厳格なコンプライアンスが企業の信用を高め,商品のブランドになっていることについての問題意識が足りなかったのである。この場合,中小企業法務では社長に原則に立ち戻って行動することをアドバイスすることになる。
 あるいは,個人の相続は会社の命運を大きく左右する。中小企業法務では個人資産の相続と会社の承継が大きなテーマである。早い段階から遺言を作成し,相続税の対策を行い,思い切った企業分割も視野に入れるなど検討するべき課題は多い。個人の問題も合わせて考えなければならない。これも中小企業法務である。