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№37 地域イノベーション

 今読んでいる本はインキュベーション,イノベーションクラスター,スピンオフ,とよく分からない言葉がキーワードになっている。「共同研究開発やスピンオフ研究者の人的交流を通じ,大学基礎研究と『暗黙知から暗黙知への共同化』によりプロダクトイノベーションを進めていく」となっており,分かったような分からないような展開になっている。もちろん,これは筆者が悪いのではなく,筆者と共通の言葉を持たない読者である私の問題だ。専門書というのはそういうものだ。
 さて,この本の重要なキーワードであるクラスターというのは「特定分野に属し相互に関連した企業と機関からなる地理的に接近した集団」と定義されている。米国シリコンバレーなどがその象徴だ。IT関係に特化して企業や大学などの研究機関が相互に連携してネットワークを形成し,新たな革新をもたらしていくというものだ。地域内の異種業種が相互に交流したり,大学内の中核的な研究機関と企業とが連携する,そこに新しいアイディアが生まれていくというのだ。
 本書の中で,長山宗広はこの新しいアイディアについては,プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションに分けて分析的に論じることによってより精緻なものになっていくとしている。そして,クラスターつまり事業所,その他の機関による地域内の連携から生まれるイノベーション(新しいもの)の多くはプロダクトイノベーション,つまり,製品の革新であるという。確かに,最初のアイディアが生まれて,それをさらに成長させるにはそれを大量に生産し,流通に乗せなければならないがその多くは多額の投資や設備,人材が必要となって地域の及ぶところではない。
 この新しいアイディア,プロダクトイノベーションがどのように起こっていくかについてが本書の重要なテーマなのであるが,それが『暗黙知から暗黙知への共同化』のプロセスなのだ。地域に集積された異種業種,研究機関との交流の中で意識や文化の交流が生まれていくというものであるが,これは我々同友会で例会後でいっぱいやっているところで,「歓談」を繰り返しているうちに,おもしろいアイディアが出るということを難しく言っているに違いない。