名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№82 譲渡制限株式

 中小企業の大部分は定款で譲渡制限を定めている。株式が第三者に譲渡され,見知らぬ者が会社の経営に介入を防ぐためだ。中小企業は社長がお父さん,専務がおかあさん,監査役がおばあさんという構成も少なくない。ある程度会社の規模が大きくなって年商が20億円程度になった企業でも同族会社がかなり多い。

☆ 中小企業株はそもそも売れない
 そもそも,中小企業の場合,株式はなかなか売れるものではない。中小企業の多くは安定に欠け,経営のリスクを抱えているからだ。中小企業の株式を買おうというのは経済的利益よりも何か別の目的があると考えてもよいかもしれない。

☆ 相続人も株式をもてあます
 そのため,実際に譲渡制限に意味があるのは相続の時と言ってよい。相続が生じて,会社経営に無関係な相続人が株式を相続してしまうことは少なくない。相続人にとっては株式に価値があると多額の相続税を負担することになる。しかし,株式を売って相続税を支払うことはできない。だからといって,相続人自身が会社に買取を求める権利はない(会社が買い取る請求手続きは存在する。)。相続人としては八方ふさがりとなり,かなり譲歩してでも会社に買って貰わなければならないことになってしまう。

☆ 会社クーデターの危険
 また,株式の売渡請求という手続きがある。定款で売渡請求手続きを定めている場合は,会社は相続人の株を強制的に買い取ることができる。しかし,これには思わぬ落とし穴がある。社長がお父さん,副社長がおじさんで息子がまだ若く単なる従業員である場合だ。社長が亡くなると副社長が息子に対して株主の買取請求ができてしまうことがある。将来跡取りにと思っていても,副社長がクーデターを起こすことが可能となる。
 これを防ぐ手だてをいろいろ考えてみたが決定打はないようだ。むしろ、社長が生きている間に、権利力を生かして副社長から株を取り上げておくのがよいかもしれない。