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№2111 取引コスト

№2111 取引コスト

取引は不確実なものだ
 取引コストという考え方は私たち法律家にとってかなり有益な考え方だ。
 取引は相手があるので,いつも不確実性がある。「信頼」というのは,不確実だが信頼するという意味だ。

 契約はこの不確実性に伴うコストをいかに減らすか,不確実性に伴うリスクをいかに減らすかという役割を担う。

人は必ずしも合理的ではない
 取引コストというのはウイリアムソン(Williamson)が1970年ころ体系だてているが,おもしろいのは,人は必ずしも合理的に動くとは限らないという考え方だ。

 つまり,情報収集,処理,伝達能力は常に限定的で不確定要素がある。経済学の世界では経済人は常に合理的に活動することが仮定されているけど,ウィリアムソンは合理的な範囲は限定的であると仮定している。これは限定的合理主義と言われる仮定だ。

不確実部分ではお互いの駆け引きが発生してしまう
 限定的合理主義の世界では分からない部分は不確定だ。この不確定部分について,対立する当事者間ではお互いに自己の有利なように行動する可能性がある。まあ,性悪説のようなもので,機会があれば相手に有利に,自己に不利に状況が作られてしまうかもしれない。これは機会主義と言われる仮定だ。

商売上の不確実性を減らすためのコストが取引コストだ
 ここからが重要なのだが,不確定要素の中で動くことはけっこうしんどい。いろいろ調べなければならないし,契約書も緻密にしなければならない。取引や生産の流れも止まりがちだ。そこで,この「取引コスト」を下げようと言うインセンティブが発生する。

 この当たりのインセンティブから発生する議論というのは多岐にわたり,ウィリアムソンはこの理論の確立のおかげでノーベル賞をもらったらしい。

取引コストを減らす作業はこんな風に行われる
 ① 組織
   限定的である合理性の範囲を広げるために人と相談する。経営的に成功するためにはどうしても組織が必要となる。
 ② 内製化と外注,提携などの選択
   いちいち取引していると,不確定要素が増大してかなわない。なら,いっそのこと内製化しようというこもある。しかし,内製化もまたコストがかかるし柔軟性を失う。そこで,事業目標に見合った最適な連携のあり方が模索される。
 ③ 系列化
   特別な取引のために相手に投資させ,その資産がその取引にしか役立たないようにする。そうなれば,資産はあっても他に流用できないので逃げられなくなる。これは大企業のやり方ですね。
 ④ ルーティーンワーク化
   結びつきが強固になって関係が安定すれば,それはで取引コストは下がることになる。


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