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№2092 公害対策に対する企業リスクと企業の社会的責任

№2092 公害対策に対する企業リスクと企業の社会的責任
 先日,名古屋の商工会議所で環境ガバナンスをテーマに講演しました。3時間ぐらいの講演ですが,エッセンスです。

1. 公害リスク
  日本の歴史上,公害は最大の環境リスクとして現れている。ひとたび公害事件を発生させれば企業の損失は計り知れない。信用損失も著しい。

  四大公害訴訟を始め,多くの公害判例の積み重ねがあり,公害企業が責任を免れた事例はないといってよい。公害企業に対する判例の態度も厳しい。公害物質はおよそ危険なものであるから,最高度の回避措置,ちょっとでも危ないなと思ったら事業を中止してでも回避措置をとるべきだとおいうのが定着した判例だ。

  新潟水俣病(S46.9.29判決)
  「化学工場が製造工程から生ずる排水を一般の河川等に放出して処理しようとする場合においては、最高の分析技術を用い、・・・・・人体に危害を加えることがないよう万全の措置をとるべきである。・・・・最高技術の設備をもってしてもなお人の生命、身体に危害が及ぶおそれがあるような場合は、企業の操業短縮はもちろん操業停止までが要請されることもあると解する。」

2. 環境コンプライアンスの重要性
  公害対策のために,環境基本法水質汚濁防止法大気汚染防止法,土壌汚染対策法,廃棄物処理法など様々な法規があり,企業には多くの義務づけが存在する。環境法令遵守は企業にとって非常に大切だ。測定を義務づけられる場合もあるがその改ざんも大きな社会問題を引き起こす。
   中小企業であっても、例えば工場から化学物質が流れ出し、大量の魚が浮いてしまったらマスコミに載り、大きな社会問題を引き起こしてしまう。

3. 企業リスクの例
 ① 社会的信用の低下
    食品偽装等のコンプライアンス違反行為には市場が厳しい評価を下し、イメージダウンによる売上減、経営トップの交代、さらに操業停止や倒産・廃業に追い込まれるケースも多々見られる。中小企業では取引先を失うこともある。

 ② 被害者に対する賠償問題と会社の設備投資
    排出基準超過等の有害物質流出事例では、放流先河川等での環境汚染・生物被害のほか、それを通じて流域の水道供給や漁業にも被害を与え、それに伴う補償を求められるおそれがある。
    水道事業者の例では、水道水源汚染時の追加的処理費用として、数百万円~数千万円規模の補償を求めているケースがある。
    有害物質流出事故後の対応として、流出先での漁業の風評被害に対し漁協等に 6300万円の補償金を支払ったほか、現地工場の設備改修と他工場の類似事故防止のため事故後 3年間で、設備投資約 10 億円、追加的経費(人件費等)約 16 億を費やした例がある。

 ③ 担当者の処罰
    排出基準超過や測定データ改ざんの例では、法人だけでなく環境管理担当者等の個人も法令違反を問われ、略式命令による罰金を科されている。

 ④ 許認可の取り消し

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