№1894 従業員への事業承継
従業員に事業承継させる場合、従業員は会社の株を買い取らなければならない。しかし、借金と資金という大きな壁が立ちふさがってしまう。この壁を乗り越えつつ、少なくない会社で事業承継が実施されている。その方法はどんなものだろうか。
1. 退職金の位置づけ
事業承継の方法がどのようなものになろうとも役員の退職金を利用することは意味あることだ。退職金で資金がオーナーに還元された分だけ株価は下がり、下がった株価で株を売る。退職金をもらわないで高いままの株価で売ってもお金は入るが、結局同じ事だ。これはひとえに課税金額との相談になるが、一般的には退職金が組み合わされる。
2. 従業員が直接株を買い取る
従業員がオーナーの株を全部買い取ってしまえば問題は無い。資金源は従業員が個人的な融資を受けてオーナーに支払うことになる。跡継ぎにあらかじめ準備させてお金を貯めさせたり、政府系の融資を受けることができる場合がある。銀行もこうしたタイプの商品を開発している。この借金は従業員が受け取る役員報酬から返済する。
3. 会社が株式を買い取る
あらかじめ少数株を従業員に与えておき、全株を自社株として買い取るという方法がない訳ではない。しかし、この場合、自己株式取得の制限が会社法上存在するため、そもそも許されない場合がありうる。自己株式取得は資本的取引として扱われる。譲った株主は配当があったと見なされてしまう。
4. 中間会社が買い取る
承継従業員が単独株主の中間的会社を作り上げて、そこがオーナーより株式を買い取る。買取資金は中間的会社が借り入れする。この借り入れは承継対象会社が連帯保証したりする。その後に合併すると、中間的会社が借り受けた株式購入資金を会社が返済することになる。
将来の業績によって資金を調達するという技巧的な手法だ。
5. 事業譲渡
これは会社を承継せずに事業のみを移転させる。借金がたくさんある会社には向いているかもしれない。つまり、借金は残され、事業は生き残る。けっこう危険な手法だ。
これらの手法はどれか一つということはない。いずれかの組み合わせを行うことになる。最も重要なのは課税対策だ。お金、株式が動けば必ず税金問題が発生する。移動するあらゆる場所に課税問題がどれだけあるか検討して最善の策を作り上げていく。
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