№1454 事業承継のデザインと弁護士の役割
最近,事業承継が問題となる事例が増えているのを実感している。顧問弁護士として会社の事業承継にどのようにかかわっていくべきだろうか。
事業承継の典型例は子供が承継する場合だ。
大学卒業後子供を別の企業に就職させ,その後に呼び戻し自社でキャリアを積んでもらう。徐々にキャリアアップを図り,子供が45歳ぐらいになったころに社長に就任し,創業者は会長職として業務をアドバイスする。やがて,創業者は70歳ぐらいになると業務から完全にリタイアする。会長は企業者団体などで活発に活動していく。
こうした事業承継を計画的に進めるような場合,企業としてはもっぱら税務対策が中心となる。税理士さんが暦年贈与など特別な控除などの利用,株価操作などを通常行われているような対策を進めていくことになる。
弁護士が関与するような場合はこれにイレギュラーな状況が加わるような場合だ。
たとえば,創業者がいつまでもリタイアしないで事業承継したときには後継者はいつのまにか60歳になっているような場合がある。
こうした例では創業者子飼いの従業員もあわせて高齢化し次の世代が育ちにくい状況にある。古参従業員の退職も課題になる。また,こうした例では創業者が経営権をなかなか手放そうとしなかったりして株の取扱も問題になる。
なかなか後継者を決めきれない状況で,兄弟間の親族間紛争も起こることがある。たとえば,兄,弟で事業に携わり,後継者が決めきれないまま推移して創業者死亡後は深刻な相続問題が生じることがある。
逆に創業者が早期に亡くなる場合もある。
後継者がいなかったり,十分育っていなかったりする。この場合,中継ぎの社長を用意することになるが,中継ぎ社長の処遇をきちんとする必要がある。
中継ぎ社長の給料,退職金,株を取得させるのか,連帯保証は誰がするのか,いかに連帯保証を外していくのか問題となるだろう。
所有と経営が分離するのでコンプライアンスの徹底も重要となる。
取締役会,株主総会,監査役など会社管理をどうするのか。就業規則な賃金規定などなにともときちんとしたルールを進めていく必要もある。また,若い後継者をどのタイミングで社長となって働いてもらうかも検討課題だろう。
後継者がいない場合もある。
さらに,会社は廃業させ,精算していくということもあるだろう。この場合は税理士さんが中心になるが,難しい案件となると弁護士でないとどうしてもうまくいかない。
多額の借金があってどうにもならない場合がある。
この場合,新会社を設立して借金を切り捨てる手法が検討されるが,かなり難しいので弁護士との相談は不可避だ。