№1579 IT,システム開発の遅れと責任
IT関係でシステム開発を依頼した場合,その遅れがしばしば問題となる。難しいソフトウェアだけでなく,たとえばホームページの作成でもその遅れの責任は誰が持つかというトラブルは日常的に存在する。
システムの最終決断者はユーザーであるため,開発業者からすればユーザーによる仕様の確定の遅れ,あるいは注文の追加,変更があったから遅れたということもある。
この点については判例の流れはIT専門家として開発業者の責任を重く考えていると言って良い。
確かに,開発工程は開発側と注文側の共同作業ということがあるが,開発業者は専門家としてユーザーの意図を正確に聞き取る義務がある。
また,開発について専門知識がある開発側しか,開発の工程や段取りは分からない。そこで,システム開発業者としては開発という共同作業のスケジュール管理,マネジメントを適切に実施する義務がある。
これが裁判所の基本的考え方だ(「ソフトウェア開発関係訴訟の手引き」判タ1349号)4頁。
東京地裁H25.11.12判決(判タ1406,334頁)ではこの点ついて次のように判示している。
これは電子チケットサービスに関するシステム設計・開発業務を受託した原告が,完成後代金の支払いを求めたところ,開発の遅れを理由に支払いを拒まれたという事例だ。
「原告(開発業者)は,システムの設計・開発業務の受注者として,本件システムの仕様を確定するにあたって,各仕様の項目について注文者から十分にヒヤリングを行った上,納期までの開発段取りを決定して詳細スケジュールを確定し,その進捗状況を管理しながら開発を進める義務を負っていたというべきである」
ちなみに,この事例では開発の遅れにより,その分,発注者側の派遣社員の仕事が増大したことや,外注費が増大した点をとらえて,その分の賠償責任が認められ,請負代金から減額されている。
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