№2104 ソフトウェア開発契約の特徴
IOTが脚光を浴び、システムはますます重要になっている。たとえば製造管理をめぐるシステムを導入する場合などは製造プロセスに携わる各社員がこのシステムになれなければならないので経営者としてはかなり覚悟が必要だ。
多店舗展開をはかる小売業者がPOSシステムに在庫管理,マーケッティング分析機能を持たせようというとき,会社全体の仕組みを作り直さなければならないのでやはり大きな覚悟がいる。
システム開発をめぐる契約は非常に難しい。しかし,企業法務をにおいてはこの問題を避けて通ることはできない。システム開発は法的には請負契約とされることが多い。請負というのは家を建てるというような具合に,何か特定の成果(仕事)があって,それを作ってくれという契約だ。
① ユーザーが提案依頼書(RFP)を作る。
② ベンダー側が要求仕様を整理し「要件定義書」を作成する。
といったやりとりがある。要件定義書は多くは,仕事の内容となる。
しかし,要件定義だけでは実はまだ具体的ではない。それに,要件定義後,開発段階にはいっても仕様の変更がされることもある。ユーザーとベンダーは繰り返し繰り返し協議を続け,さらに内容が煮詰まっていく。ユーザー側の指示によってシステムの内容が複雑化する場合もある。
つまり,ソフトウェア開発契約では,最初に仕事が決まっている訳ではなく,その後の展開を動的にとらえていく必要がある。動的にとらえると言っても,結局のところ,口頭のやりとりとか,メールのやりとりとか,議事録で関係をとらえていくことになる。
診療契約の場合,カルテの記載方法がおおよそ確立している。ドクターたちは研修時にカルテ作成の訓練を受け,誰が読んでも治療のプロセスがわかるように心がけている。しかし,ソフトウェア開発ではそのようなルールはない。
弁護士がもし事前に関与するとしたら(ほとんどは事件発生後にしか関与しない)議事録,メールのやりとりの方法について後日立証可能なようなルール化をめざして契約に関与することになるだろう。それは,結局何かやりとりしたときに,【結論】という項目を建てて,合意する内容を簡潔かつ特定できる形で記録化することにつきる。
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