名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1366 IT産業とアジアの新展開

№1366 IT産業とアジアの新展開

 「ハイテク産業からみたアジアの産業集積」という文章を読んだ。
 これは「アジアの経済発展と産業技術」という本(ナカニシヤ出版)に掲載された論文の一つだ。

 速い速度でのイノベーションが求められるIT業界にあっては,様々な外部企業との連携によってイノベーションを取り込むことが求められる。つまり,世の中にはたくさんのイノベーションが日々生み出されているが,外部で生み出されたものをいち早く取り入れなければ,進歩に追いついていかない。そうした外部からのイノベーションにかかわる情報を取り入れる仕組みを企業内に作らなければならない。

 また,新規事業は常にリスクが伴う。実用化に至るまでのリスクをベンチャー企業に引き受けてもらう必要がある。つまり,新規事業に伴う事業上のリスクヘッジのために外部企業との連携は必要なことだ。あるいは,企業内部では実用に至らないイノベーションを,スピンオフと言った外部化によって実用に至らせる必要がある。

 この2つの理由,①外部からの情報の取り入れ,②リスクヘッジからとりわけIT産業界においては,外部連携が必須であるし,最近は連携そのもの企業連携のマネジメントそのものが一つのイノベーションであると認識されるようになっていると思う。

 こうした,外部連携は地域における企業集積が重要だということになる。企業集積によって企業間の情報交換は進むであろう。個人的レベルの交流も進み,体験的な情報,「暗黙知」の交換も進む。地域に存在する人間関係が新しいアイディアや生産につながっていく。ITというグローバルな展開をもたらす業態には実はローカルな企業集積が効果的というのはおもしろいパラドクスではないだろうか。シリコンバレーは典型例だ。

 前置きがかなり長くなってしまった。
 論文ではアジアのIT産業の企業集積をとりあげている。

 アジア,とりわけ台湾,韓国,中国のIT産業分野の発展がローカルな企業集積によってもたらされている点を指摘している。

 台湾の新竹化学工業園区,韓国の大徳専門研究団地,中国の中関村を取り上げている。これらの都市はいずれもシリコンバレーの成功をモデルにハイテク産業の集積をはかっているということだ。政府主導で産業集積をはかっていること,中核機関として大学研究機関を立地されていること,ハイテク産業の拠点人材の集中をはかっていることを特徴としてると分析してる。

 私がこの論文で注目したいのは,企業集積は関連企業の集積があってその産業の「厚み」を指摘している点だ。アジアの産業拠点においては「大型の製造拠点を中心に研究開発施設,関連子会社,装置や部材などの裾野産業の集積も見られる。」ことを指摘している。
 
 一口にITと言っても研究開発から組み立てに至るまで様々な段階がある。この段階に応じて企業集積が進んでいるというのである。韓国での企業集積の厚さ,連携に密度については「コンビナート」と比喩するほど連携が進んでいるという。

 アジア,とりわけ中国では特定の地域に集積させた巨大企業と,それと連携する様々なタイプの企業,さらに裾野産業,つまり中小企業の有機的な集積をはかられつつある。私の実感としてもハイテク産業に限らず,こうした地域集積のモデルは中国では重要課題と位置づけているように思う。

 日本の中小企業はこのようなアジアの動きの中で,一定の地位を確保する動きをしなければならない。ITはわかりやすい例として提示されているが,実際の動きはITに限定されていない。中国や韓国,タイなどでは中小企業が徐々に発展してきている。日本の中小企業はパートナーとしてのローカル企業を見直す必要があるし,連携してグローバリゼーションが進むアジア経済に展開する必要がある。

  名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら
                 → http://www.green-justice.com/business/index.html
イメージ 1