№2335 共同開発契約の注意点
1. オープンイノベーション
ハーバード大学ヘンリー・チェスブロウがオープンイノベーションの概念を提唱したのは2003年だった。以降、オープンイノベーションについては様々な研究がされているし、オープンイノベーションの名の下に政府、企業が取り組みを進めている。
オープンイノベーションとは製品・技術開発にかかわる情報をオープンにし、個人、企業、研究機関間で相互に交流、提携して新たな開発を生み出そうというものである。既存企業が既存技術をもってスピンアウトすることを許し、スピンアウトした起業家が事業を展開するという形態もある。この場合は企業内で寝ていた技術が、日の出を見るチャンスを得ることになる。
2. 我が国におけるオープンイノベーション政策
オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がおけるオープンイノベーション白書を発表し、実情を紹介している。大企業、中小企業、大学など研究機関が相互に関係し、それらを自治体国が支えるという方式だ。
中小企業が大企業にはない技術で勝負し、大企業の指導を受けつつ事業を展開するということは普通にあった。大企業で得た技術をもってスピンアウトした起業家も多い。しかし、インターネットの発達によって世界規模で情報や頭脳の相互交流が進んでいる。一企業だけでイノベーションをはかろうと思っても限界がある。
3. オープンイノベーション時代における契約
オープンイノベーションの進展によって一口に共同開発とは言っても、様々な形態が考えられるようになった。特に産学の連携が進むと大学と企業との共同開発契約も必要になる。大学の場合、研究成果を公表して価値あるものになる一方、企業側は成果を自社で守って価値あるものになるため、その調和には結構難しい問題が生じる。
ともかく、契約にあたっては次のことを注意するべきだろう
① 開発の目的の明確化
② 開発の成果は何か。どのような事業戦略で活用されるか。
③ 開発のプロセスは誰が管理するのか。
④ 開発のプロセスに予測外事項に対する対応方法
想定外の費用負担、労力負担、新たな開発目的の発見の場合どのように対応するか。
⑤ 開発の成果である知的財産、特殊技術の権利帰属主体、利用方法
⑥ 開発が不主義に終わったと誰が判断するか。
⑦ 開発の不成就の場合の撤退戦略
⑧ 当事者間の守秘義務