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№1103 環境コンプライアンス

№1103 環境コンプライアンス
 米国企業向けに環境法の国際比較を行う本を出版することになった。私は英語ができないので誰かが約してくれる。

 私に与えられたテーマは環境コンプライアンスに関する問題だ。とりわけ刑事処分に関わる問題が中心となっている。ちょっと、その骨子を考えてみたい。

 今日多くの企業がCSRのテーマとして環境問題に関心を向けつつある。しかし、企業経営上の視点から言って、環境コンプライアンスの問題は無視できない問題である。環境法や環境破壊を招くことが企業にとっては深刻な経営危機に直結することがある。例えば廃棄物処理業の場合、環境コンプライアンスを逸脱することにより業務資格が停止されたり、失ったりする。そのような場合は事業自体の継続が困難となる。

 環境問題を引き起こした場合、我が国では環境法系の行政法規よる処罰と一般的な刑法による処罰の問題がある。もっとも一口に環境問題とは言っても自然環境の破壊の問題から、廃棄物処理の問題、さらには人体被害を引き起こす公害問題まで様々ある。しかし、行政罰や刑法上問題となるものの多くは廃棄物処理や公害問題であろう。

1. 廃棄物にかかわる問題
  廃棄物については我が国では無断での開発や不法投棄が問題となっている。廃棄物にかかるコストは直ちに利益を生み出さない。企業としてはコスト削減の為に廃棄物処理法を僭脱することがある。我が国では廃棄物処理法によって処罰されるがそのリスクは非常に高い。
  廃棄物処理法違反によって業務上の資格を失うことがあるほか、違法行為を犯した企業に多額の罰金が科せられる。行政からは原状回復命令が発せられることもありその費用に多額のコストをかけることになる。企業の信用も著しく低下する。
  
2. 公害にかかわる問題
  我が国の環境法は環境基本法があって、大気、水、騒音など様々な政策が行われる仕組みとなっている。行政的な規制は最後には政府や自治体の命令、行政罰、刑罰によって担保されている。その罰則の内容は各法規を参照されたい。
  大気汚染などが人体被害を招いた場合には主には民事上の賠償責任の問題として処理されている。しかし、現に人が傷ついたり、死亡したりする場合には刑法犯として処罰されることになる。我が国は業務上過失致死罪という罰則があり、業務に起因して人を傷つけたり、死亡させたりする場合には刑法犯として責任者は処罰される。
  
3. 公害訴訟
  公害問題に関しては特異な展開を示している。日本では急激な経済成長を果たしたが、同時に深刻な環境汚染を引き起こした。この公害問題に対して多くの悲劇的が発生し、広範な市民運動が展開された。訴訟はこうした運動を束ねる役割を果たしてきた。我が国の公害訴訟ではこれまでほとんど全ての訴訟が企業の敗訴で終わり、企業には多額の賠償金の支払いが命ぜられた。そればかりでなく、改善のための多額の投資も強いられた。

  株主が経営陣の環境コンプライアンス違反を追及することがある。最近の事例では六価クロムが混入した廃棄物を不法投棄した幹部に対して486億円の賠償責任が認められた事例がある。