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№307 土壌汚染は誰の責任

№307 土壌汚染は誰の責任
 土壌汚染対策法が施行されて以来,土壌汚染に関する訴訟が増えているような気がする。高度経済成長期に各地で廃棄物が捨てられたのだが,それが最近になって亡霊のように問題なってきたように思う。

 優良宅地だと思って購入した土地が,地盤沈下を始め,調べてみたら地下に廃棄物が埋まっていたという事例はここ最近だけでも数件受任している。

 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」ができたのが昭和45年のことだが,それより以前は廃棄物は捨て放題だった。廃掃法ができてからも最初は監視が甘く,私たちの目から見ればやはりやり放題だった。不法投棄もあちこちにあった。

 そうしてできあがった廃棄物の山に土をかぶせ,宅地として整備して分譲するということが行われている。土地がなくなり,元処分場であった土地にも住宅が建つようになったのだ。

 転圧不足による地盤沈下は普通は数年以内に起こる。しかし,廃棄物が埋まっている土地はなぜか,だいぶ経ってから,時には10年,20年経ってから不同沈下が起こることがある。それは,廃棄物と共に捨てられた有機物が腐敗したり,廃棄物層が水分を遮断して上部に水をためこんだり,原因はいろいろあるみたいだ。

 そんなとき,一体誰が責任を持つだろうか。売り主は瑕疵担保責任など売買契約に基づく責任を持つ。建物を建てた者は,地盤調査を怠ったということで責任を持つ。土地を造成した者は,住宅にふさわしい地盤を作らなかったことで責任を持つ。

 しかし,地盤の調査は容易ではない。時間がたっていて時効(除斥期間)という壁もある。最後の所有者だって,こんど売るときには責任ができてしまう。

 そして,うまく責任が追及できた場合でも,肝心の損害をどのように算定するかが問題にある。不同沈下したとはいえ,家は一応建っている。住むこともできる。それなら損害は小さいじゃないかとも言われそうだ。しかし,永久のすみかとしてマイホームを購入した住民にとって,住むことができるではすまされない。