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№885 史記

№885 史記
 司馬遷史記」に関する本を読み続けている。「史記列伝」(岩波書店)に続いて「史記」(徳間文庫)もようやく終わりに近づきつつある。返す返すも司馬遷の高い能力に驚いてしまう。史記は「本紀」、「表」、「書」、「世家」、「列伝」と分かれている。膨大な資料と調査に基づいて作成されたもので、史記を中心にしたプロジェクトがあったのだろう。だとしたらその統率力もすごいと言わなければならない。

 史記はとても膨大で奥が深く私のようなシロウトがちょっとかじったぐらいでわかるものではないが、歴史観や人物評に接すると、自分の価値観にも深く「史記」の影響があることがわかる。日本人には固有の文化もあるだろうが、それは中国、朝鮮、最近では欧米の影響も深く根ざしている。史記に接するということは、日本人である自分の価値観をゆっくり探り、自分の中に3000年前の中国があること探る当てる作業でもある。

 史記の人物は完全ではないことが多い。欲望や復讐心、恐れなどから君子にあらざる行動にも出ている。政治や社会に身を置くというのはそういうことだ。しかし、彼らは歴史を変えるほどの大きな能力を発揮している。紆余曲折はあっても名誉や信義を重んじることで、大きなスケールを作り上げた点に私は学びたいと思う。

 史記では外交、内政、戦争、思想と様々な場面で、それぞれの能力を発揮した人物が描かれている。どの人物もその時代の、その自分の生きた時点での歴史の構造を把握してきた。世界史の大局観を間違いなく把握する洞察力が、結局のところ多くの人を惹きつけ、為政者にも影響を与え、歴史を動かす結果となった。

 歴史は小手先のアイディアでは動かない。信義と実利、この2つが備わなければ動かない。