№813 中小企業M&A、動機とその後
中小企業のM&Aには大きく分けて2つのタイプがある。
一つは大きな債務を整理するために事業を売ってしまうような場合だ。事業を譲渡して、残った会社は精算してしまうような場合がある。事業自体は利益をあげていれば、こうした操作は可能性がある。
もう一つは社長の引退のためのものだ。
団塊の世代は若い頃に事業を興し、そろそろ60才前後となっている。そろそろ引退の時期を予感していることだろう。その時に、どのように事業から引退するのだろうか。跡取りがいればよいのだが、適切な跡取りが見あたらない場合や、番頭格の部下が跡取りになる場合でも単純にうまくいかないことがある。そんな時にM&Aを考えたりする。
事業の実績がよく、子供も立派に成長し、有名大学に入ったとする。しかし、必ずしも家業を継ぐとは限らない。
自社でナンバー2を育ててきたが、会社を買い取るだけの資金はない。社長を譲っても、銀行は連帯保証を抜き取ることには同意しない。前社長の個人資産を信用して金を貸したという理屈だ。
この場合、ナンバー2はいわば雇われ社長の身になるため、オーナー社長とは勝手が違うことになる。新社長はオーナーに対して、説明責任を負担しつつ、事業を運営しなければならない立場に立つことになる。
新社長は常に根拠をもって事業戦略を考え、根拠をもって決断しなければならない。その当たりは専門的なアドバイスも必要になるかも知れない。顧問弁護士はこうした新社長の「根拠」について相談に乗ることもある。