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№696 IBMのイノベーション

№696 IBMイノベーション
OPUN INNOVATION(産業能率大学出版部)ではIBMの成功例が紹介されている。

 この部分を読むと、IBMインテル、国内のコンピュータ産業のここ数年の動きの意味が理解できる。
 著者チェスブロウはオープンイノベーションのある断面について「新たなタイヤを発明するのでなく、他社のタイヤを用いて新たな自動車を発明するのである。」と述べている。
 
 独創性ある開発を自社で行い、自社で応用し、自社で売るというのをクローズドイノベーションとすれば、既に世の中にある(バリューネットワーク)開発を利用するのがオープンイノベーションの発想だ。既にあるテクノロジーをいわばマネジメントするのも「発明」だというのである。
 
 もちろんその成功の基準は「利益」だ。利益はいかようにもをとれるが、社会貢献の基準だったり、活動のスケールを決める基準だったりする。
 
 IBMだが1945年から1980年にかけての戦略はクローズドイノベーションの発想だった。コンピュータ技術で他社を圧倒して独占状態だった。このような時代ではイノベーションを自社に閉じ込め、自社で活用するビジネスモデルが有効であった。
 
 しかし、1980年代以降、コンピュータ・サイエンスの広がりとともにIBMの独占状態が崩れ始めた。ミニコンピュータの普及やパーソナルコンピュータの出現や成功はIBMの極めて高価なコンピュータは必ずしも市場の要求ではないことを証明した。
 
 このような情勢下でIBMは改めてコンピュータをとりまくバリュー・チェーンを見直した。IBMは自社の強みがシステムであると気づき、そこの特化したビジネスモデルを構築し始めたのである。システムを構築するための機械、流通、生産などは必ずしもIBMでなくてもよい。IBMの商品は「優れたソリューション」であるとし、その他のものについては様々な外部の技術、発明、生産、流通システムを利用し始めたのである。
 
 IBMは自らの「ソリューション」を核にして、いわばあらたなネットワーク、コミュニティを気づきあげた。これにより、IBMのマーケット規模は広がり、より大きな規模の活動、より大きな利益を得るようになったのである。オープンイノベーションはこうした、外部との緊密な連携に創造の価値を見いだす考え方だ。