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№697 ある製造業のおっちゃん

№697 ある製造業のおっちゃん
 ある製造業のおっちゃんはかなり借金を抱え込んで大変だ。私の事務所に相談に来たとき、もう破産か逃げるしかないと追い詰められていた。確かに、現在の売り上げからすれば到底返せるあてはない。普通なら破産だ。
 
「確かに、債務を逃れようというのであれば破産しかありませんね。でも、その後どうやって生活しますか?」
「どこか、知り合いのところに雇ってもらおうと思っています。」
「でも、年齢からいって大丈夫ですかね。これまで、ずっと○○一筋でやってきて、別のことはできないでしょう。」
「そうかもしれません。いまさら別のことはできません。」
「まず、本当に雇ってもらえるか確かめてから破産は考えましょう。破産はいつでもできます。次の生活のめどが立たないと破産をしても無駄になります。」
 
 結局、おっちゃんは当てにしていた就職は難しかった。
「やっぱりダメでした。」
「今さら、転職はできないんじゃないんですか。このままがんばってもいいように思いますが。」
「そんなことできるんでしょうか。」
「借金を払わなければ、けっこううまく行くと思いますよ。」
 
 債務の内容は全て信用保証協会付きの融資だ。それならば、保証協会には申し訳ないが、破産しないでこのままいく方がずっといいという結論になった。少しだが、今でも仕事はある。借金を払わなければ、月額40万円空50万円ぐらいの収入にはなる。自宅は競売にかけられるがしかたがない。
 
 このおっちゃんは、弁護士と協議して借金を払わないと決めた。そしたらずいぶん気が楽になったのか、最近はずいぶん熱心に勉強するようになった。まず、会計の管理だ。青色申告会に行ってソフトを紹介してもらい、会計を完全に管理できるようにした。つぎに、経営計画を作り始め、営業戦略を作った。毎月、営業活動の時間を確保し、自動車部品の製造のかたわら営業活動を行い、徐々に失った仕事を取り戻し始めた。インターネットを通じた直販を始め徐々に成果が上がり始めた。
 
 最初は、首をくくらないかんと思っていたおっちゃんは今では将来の展望を徐々に持ち始めている。これまで、まじめに仕事をしてきた信頼という財産が残っていて、お客や仲間が少しずつ助けてくれるのだ。