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№604 営業秘密(顧問先への報告)

№604 営業秘密(顧問先への報告)
 
 
株式会社 ○○
代表取締役 ○○様
 
 営業秘密の保持に関する法律問題についてご依頼があったので調査しました。今回のレポートは社内ルールに関するものです。ライバル企業に対する対応が問題なる場合には別途お知らせください。
 
                 平成22年10月○○日
                      名古屋E&J法律事務所
                        弁護士  籠橋隆明
 
1. 営業秘密
1) 営業秘密には、顧客名簿、販売マニュアル、仕入先リスト、財務データなどの営業上の情報のほか、製造技術、設計図、実験データ、研究レポート、図面などの技術上の情報が含まれます。特許など知的財産として保護の対象とならない情報についても一定の保護が図られることがあります。
 
2) しかし、営業秘密は厳密な定義が無く、事業者が秘密としておきたい情報ということになります。秘密が漏れることを防ぐという時には、そもそも保護される営業秘密は何かということを正確に理解しておく必要があります。
  不正競争防止法では営業秘密とされるためには、次の3つが必要とされています。
  ① 秘密として管理されていること(秘密管理性)
  ② 事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)
  ③ 公然と知られていないこと(非公知性)
 
 ・・・・・・・・  略   ・・・・・・・・・・
 
4) 以上からすると秘密として管理するためにはいくつか注意する必要があるかと思われます。全てをそろえる必要は無いと思いますが、いくつか必要かと思います。
  ① 秘密情報について、秘密である旨明示する。
  ② 秘密情報の管理については、持ち出し可能な者の制限、持ち出しについての許可、報告、利用後の消去など管理のルール(取扱規則)を明確にする。
  ③ 秘密情報についての取り扱いについての社内ルールを明確にし、社員教育を十分行う。
 
2. 社員に秘密遵守
1) 社員に秘密守らせるためには、社内のコンプライアンスを明確にする必要があります。秘密情報の取扱規則の周知や、問題があった場合の報告義務などを徹底させる必要があります。これは会社の正常な事業活動を進めるに当たって、問題点を恐れず指摘するという社風の問題でもあります。
 
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4) 退職社員の守秘義務については、職業選択自由の保護との関係から難しい問題があります。しかし、データを持ち出した場合には損害賠償請求を課することが可能です。しかし、こうした秘密の中には会社の秘密という面の、個人の知識、ノウハウという社員個人の情報という面がある場合もあり、判断は難しいと思われます。しかし、退職に際して守秘義務を課することはそれなりの抑止力として働くと思われます。
  米国生まれの自動車修理技術でフランチャイズ経営をしていた会社が、企業情報を不正に利用したと言うことで退職社員を訴えた事例ですが、平成20年11月18日東京地裁判決では退職者の競業避止義務を認めて、2年間、同種の事業を行ってはならないという判決を下しました(判例タイムズ1299号216頁)。差し止めというのは珍しいケースだと思いますが、こうした手段が使えます。