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№489 理念を語る

№489 理念を語る
 先日、中小企業家同友会の勉強会に出席した。
 同友会の勉強会では理念が語られることが多い。そのことが、同友会の魅力にもなっているが、初めての人は理念ばかりで現実がないと違和感を感じる人もいるようだ。
 
 実際、経営理念がお題目になっていて、現実性のないことがある。論争で相手を打ち負かすことにやっきになってしまうこともある。しかし、それらのことは、同友会全体では「注意はしなければならないが、しかし小さい渦」のように思われる。本流は、みなまじめに相手の意見を聞き、自分の事業に取り入れることに真剣だ。そこに同友会の魅力がある。
 
 事業者の理念は実践の中で生み出される。実践とは成果によって検証される。ドラッカー流に言えば(最近ドラッカー頭になっている)、「利益」こそが成果を測る最も有益な基準だ。「理念があっても儲からなければだめだ」、というのではなくて、「儲からないような理念はだめだ」というのが正しい。目標を掲げても成果を生み出さなければ無いのと同じだ。事業者の実践とはそれほど現実的で厳しい。
 
 マーケッティングとか、生産ラインの効率化とか、事業を実践する上での技術的ツールは様々ある。経営者はこれらのことを常に勉強しなければならない。しかし、これらは理念を語ることではない。理念を下にした実践の一つでしかない。
 
 事業者の理念は、実践そのものと切り離せない。事業者にとって生きる姿勢そのものと言っても良い。事業者は理念を語ることで、生活のあらゆる場面で事業の問題点や発展の方向を作ることができる。理念のもとに、生きる態度が明確になり、今の実践が明らかになる。ひとたび方向が決まれば、あとは技術的問題として「工夫次第」ということになるし、必ずしも社長が必要ない場合もある。
 
 つまり、事業者にとっては理念はお題目ではない。成果を生み出す現実的な姿勢だ。常に何かを動かそうと言う動機付けが常に求められる。理念は日々の全ての行動に結びついているため,それは「姿勢」としかいいようのないものである。
 
 この姿勢を維持することは並大抵のことではない。努力のいる姿勢だ。社長たる者、この実践的生きる姿勢を常に鍛錬しなければならない。そうでないと理念は錆びる。だから、同友会では理念を語るし、理念を語る同友会は役に立つから会員数を拡大しているのである。