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№1134 「脱下請け」 縫製会社の決意

№1134 縫製会社の決意
 昨日は中小企業家同友会全国交流会に出席してとてもよい話を聞くことができた。

 日本の縫製会社は今や中国さらにはバングラディシュに席巻され、すっかり衰退してしまった。労働集酌型の産業の宿命みたいなものだ。そんな中、愛知県蒲郡市三敬株式会社は生き残りをかけて赤ちゃん綿製品の製造販売を発展させ、成功しつつある。

 三敬社は創業50年を迎える縫製会社だ。衣類の大量縫製を行っていた。社長は当時を振り返り、一度に40万枚の縫製を手がけ、1円のコスト増が大きな額になってしまう、そのためいかにコストを下げるかに必至だったという。従業員には効率を求め、残業代を払わない、有給はとらせないは当たり前だったという。

 平成14年ころから中国製品が大量に輸入されるようになり、会社の売上が一気に20%ダウンしていったという。そんな中、「脱下請」をかかげて活動することになった。介護製品に活路を見いだそうとしたがうまくいかず試行錯誤の連続だったようだ。

 平成17年からは高品質で安全なベビー寝具の製造販売を始めた。ハグマムのブランドで消費者直販方針をとり、ネットショップを開設した。これが徐々に評判となり、現在では売上の7割を占めるに至っている。

 赤ちゃん綿製品は綿特有の柔らかさと安全性を生かし、徹底した「おかあさん」目線を重視した商品開発を進めていった。ハグマムファンは多い。従業員の中にはハグマム製品に憧れて就職した者もいるという。

 事業の発展に合わせて社員の待遇や社内環境も整備していった。就業規則を整備して、残業をとりやすくした。女性社員が一生働けるような社内環境も整備していった。社員相互、社長と社員の意思疎通をも大切にした。企業理念も明確にし、常に社員に語るようになった。

 この会社から得られる教訓は多い。企業理念の重要性、社員をパートナーと見る姿勢、社員相互の意思疎通のあり方などなどだ。私はもっとも重要なのは顧客との関係ではないかと思う。ハグマム製品は「綿」のイメージを大切にする「柔らかなお母さんたち」という顧客を惹きつけていった。お母さんたちと相互の関係を大切にし、会社にとって新しい顧客を創造していった。

 会社のアイデンティティを顧みて、会社の「顧客は誰か」、「顧客の要求は何であるたか」、「何のために会社は存在するか」それが問われた。社長はそれに応える過程で社内体制の充実を図っていった。企業理念も実践力あるものとなった。

 企業である以上、全ての実践は顧客を生み出さなければ絵に描いたもちだ。労働条件の整備もけっこうだろう、理念の明確化も大切だ。しかし、それが正しいかどうかは顧客の創造につながったかどうかによって検証される。ハグマムはそれに成功した。