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№204 平取締役の悲哀

№204 平取締役の悲哀
 企業の業績が急激に悪化し,経営者の責任も問題になってきた。大企業の場合,銀行が取締役の連帯保証をとることはまずない。しかし,中小企業となると必ず連帯保証をとる。中小企業の不透明性(所有と経営の分離が不完全で,経営や財産の実態が外部からわかりにくい)からすれば仕方がないかも知れない。

 しかし,かわいそうなのは平取締役だ。中小企業に入社し徐々に認められ,最後には取締役になることがある。もっとも,中小企業の場合,取締役と言っても従業員とどこが違うと言いたくなる状況であることが多い。しかし,法律上取締役である以上,重役としての責任はとらなければならない。

 ということで,最近取締役から私の責任はどうなるのでしょうという相談が増えてきた。もちろん,取締役は会社とは別人格だから特別な事情がないかぎり対外的に責任を負うことはない。まず,そういう説明でほっとする例がほとんどだ。何だかかわいそうになってくる。

 悲惨なのは連帯保証の判を押した場合だ。おまえ取締役だから判を押せと社長に言われ,断り切れずに判を押す例は決して少なくない。最近も,会社が倒産してなんと2億円の連帯保証債務を負ってしまった相談があった。こうなると,破産しか打つ手はない。せっかくのマイホームも無くなってしまう。会社は倒産し,自宅も失う,年齢はいっている,私としてもいったいどうしたらいいのか分からない。

 こうしたことを求める社長も社長だが,銀行にもかなり問題がある。あきらかに負担能力のない者,取締役とは言ってもオーナーとは言えない者の保証人をどうしてとるのだろうと思う。最近はほとんどないかもしれないが,つい最近まで,娘とか,息子とかの保証を求める銀行もあった。