№1292 民法改正、連帯保証問題と比例条項
前回の記事で問題点を整理したので、その解決について考えたい。
現在、金融関係は事業主以外の第三者は原則として保証をとらない。
問題はもっぱら第三者以外の連帯保証、会社事業主の連帯保証をどのようにとらえるかが問題となる。
この場合、争点は「信用供与の必要性」 vs. 「個人保証人の保護」に尽きる。
【廃止方向:個人保証人の保護】
① 与信は本来事業に注目されて行うべきと言う原則的課題
② 会社倒産の場合、個人資産全部の提供が求められ再起のチャンスを失なう。
③ 事業主に連帯保証を求められることにより、事業を承継する者がいなくなる。
④ 全財産を失うかも知れないというリスクを背負うことになり、起業が困難となる。
【維持方向:信用供与の必要性】
① 個人財産を加味した与信が行われることにより融資に柔軟性が生まれる。起業、中小零細にとって有利に作用する面がある。
② 不動産担保は金融機関にとって必ずしも有利な担保とならない。
④ 個人名義に資産を移行することで債務を免れるモラルハザードの問題がある。
⑤ 諸外国も事業主については個人保証を否定していない。
結局、信用供与の必要から事業主連帯保証は残さざる得ないように思われる。その場合、社長個人の責任範囲をどのように限定していくかという難しい問題に直面する。それは事業に関わる範囲を以て責任の範囲とするか、全財産をもって与信判断の対象とするかというあいまいな問題を含む。
このような問題に対して、民法上は比例原則を導入して、保証債務の額が保証人の財産及び収入に対して著しく過大であった場合には,保証人が有する財産及び収入の範囲に限定するような条項を設けるのがよいかと思う。こうした比例原則についてはフランスに存在するし、ドイツにも公序良俗違反という形で存在する。
この点日弁連は保証人保護の見地から比例原則を導入するよう提案し、その条項について次のような条項を提案している。
「債権者が事業者であり,保証契約締結時において,保証債務の内容が自然人である保証人の財産及び収入に対して著しく過大であった場合には,保証人が保証債務の履行を請求された時点でこれに足りる財産及び収入を有する場合でない限り,債権者は保証債務の履行を請求することができない。」
その上で、事業主個人保証の範囲を判例や金融指針などの金融政策によって限定していくのが妥当ではないかと思う。