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№1879 負債ある会社の承継問題

№1879 負債ある会社の承継問題

 負債が多額にある会社については事業承継は難しい。
 特に製造業系ともなると、数千万円、億単位の負債の普通にある。事業者は負債に慣れていても、それまでサラリーマンだった者には天文学的数字だ。

 負債ある会社の承継問題では事業譲渡を利用する手法がある。
 これは事業体全部を承継会社に譲渡し、残った負債を清算するというものだ。もちろん不正な財産流出は許されない。事業に対しては正当に価格がつけられ、適正な価格で取引されなければならない。こうした会社の価値については税理士さんなどが引き受けてくれる。

 この場合、事業譲渡契約書には負債は承継しないと明記することが望ましい。債権者に対しては負債を承継しないと伝えることも望ましい。債権者のうちでも銀行との関係をどうするかは非常に悩ましい問題がある。

 製造業の場合、不動産などの移転が必要であることが多い。不動産には抵当権がついており、どうしても銀行の同意を取り付ける必要がある。銀行に対しては率直に会社の経営状態を説明し、譲渡価格もあわせて根拠をもって説明する。銀行も多くは会社がどうにもならないことは理解していることが多く、誠実に説明すれば了解してくれることが多い。

 事業度でもう一つ注意しなければならないのは「商号」の続用の問題だ。
 事業を継続するためにはやはり譲渡後も同じ名前がよい。しかし、会社法22条1項は商号を同じくする場合には債務を承継するとしている。この場合の債務は全ての債務を承継してしまうと言う強力なものだ。商法17条1項にも同様の規定がある。前者は会社間の取引で、後者は個人事業主なども含んだ条文だ。

 そこで、事業譲渡に際して、契約書に負債を承継しない旨、書き込み、さらに債務を承継しない旨の登記を入れておく。会社法22条2項はその場合には債務は承継しないとしている。さらに念のために主だった債務者、つまり銀行に債務を承継しない旨の通知を出しておくとよい。通知によって債務を承継しないことになる(会社法22条2項)。

 実際、この種の案件はかなりこわい話だ。本来債務は支払わなければならない。それを避けるというのだから、一つ間違うと大変なことになってしまうなという直感がある。そのため、未経験の弁護士はなかなかこうした処理はできない。

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