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№1991 M&A株式価格調整条項

№1991 M&A株式価格調整条項

株価の変動と売買代金
 M&Aにおいて株価を決める場合,貸借対照表上の純資産額は重要な要素の一つだ。しかし,契約締結後,代金を支払うまでの間,一定期間がある。その間に純資産額が変動することがある。

 特に,大口顧客の代金支払い状況とか,事業自体に季節変動が大きい場合とか,いろいろあって,そのつど株価の調整が必要になる場合がある。

株式価格調整条項
 こうした場合に備えて,M&A契約では株式価格の調整条項を入れることがある。つまり,特定の基準日の純資産額がクロージング日の純資産額と比較して変動がある場合には,変動額を精算するという約束だ。

 このような価格調整条項は一見,公平なように見えて,実は紛争の種を残してしまう。

資産評価方法を変更した場合
 たとえば,会社の資産中,不動産の価格などは評価の方法によって変化してしまう。基準日の評価方法と異なる評価方法を行って,過不足が出たなどという議論をされてしまうと,契約関係はきわめて不安定になる。

 このような事例について,判例は会計処理の原則を変更するというのは跡田時じゃんけんのようなものでダメだとする傾向にある(東京地裁H20.12.17判タ1287号168頁)。これは最初に価格決定していった過程を詳細に検討し,会計処理変更を許さないとした。同様の判決は最近も出ている(H28.6.3判時2337号88頁)。

簿外債務がある場合
 簿外債務があれば,当然純資産は減る。一般的には簿外債務によって減少した純資産額相当額が賠償責任となる。この場合には価格調整条項が活用されると言えないこともない(前記H28.6.3判時2337号88頁)。

 しかし,一般的には簿外債務は存在しないと表明保証するので,簿外債務があれば,その分の賠償責任が発生する(東京地裁H18.1.17判時1920号136頁)。

 簿外債務というのは普通はあり得ない。簿外債務を知っていて隠して株式を売却するというのは詐欺罪となる。
 しかし,たとえば,従業員からの預かり金を収入としていたりして,会計処理が間違っているような場合がある。これもそんな変な会計処理をしてことが悪いということになる。M&Aを実施する場合には普段から会計処理を厳格に行うことを心がけておくべきだ。

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