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№1291 民法改正、連帯保証の問題点の整理

№1291 民法改正、連帯保証の問題点の整理
  現在、民法改正の作業が進んでいる。連帯保証制度についても重要な争点の一つになっている。
 そこで、少し論点を整理してみたい。

 連帯保証については、「決して迷惑をかけない」として情にからんで依頼を受けると断りにくいということ(情誼性),保証契約時には当面の履行も求められないため将来の負担を現実的なものと考えずない傾向(未必性)などの事情が指摘され、そのことが原因して多くの悲劇を生んでいる。

 私の経験でも、保証人は2人いると銀行に求められ、大学生だった娘まで保証人になった例がある。会社は倒産し、娘は20代にして数千万の借金を背負うことになった。親戚だというとや、その会社の社員だということで頼まれて連帯保証になった例もある。この例も900万円ぐらい請求され支払うことになった。

 こうした連帯保証についてはかねてより批判が多い。
 その主な論点は自分の利益とは無関係に、意に反し過大な債務を負担することになる点だ。上の娘の例とか社員の例などはその典型だ。

【第三者の個人保証など】
 そのため平成16年に保証契約は書面によらなければならないことや、貸金等根保証契約の根保証について期間、極度額を定めるなど、包括根保証を禁止する改正を行った。

 中小企業庁は平成18年以降,信用保証協会の保証申込案件について,経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則禁止にした(平成18年3月31日)。

  金融庁平成23年7月14日付けで「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの監督指針」を改正し,「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」を明記した。

 こうして、最近では金融機関の融資に第三者の連帯保証をとることはほどんど無くなったと言って良い。

【事業主の個人保証】
 法務省は平成25年2月26日に「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」を発表し、パブリックコメントは6月17日に締め切られ、現在は要綱作成に向けた準備段階に入っている。現時点では事業主の個人保証をどうするかが現在民法改正で大きな問題になっている。

 本来の姿からすれば、金融機関は事業自体の信用をもとに融資するべきで、それを越えて全責任を課するのはその理念に反する。実際に過大な個人債務が起業や事業承継、再起の阻害要因になったりしている。中小企業業者を過度に追い詰め、自殺の原因にもなっていると指摘されている。

 しかし、一方で個人連帯保証があることで融資要件が緩和されている事実も指摘されている。つまり、個人資産が加味されない状態で与信が実施されることになる分だけ、必然的に融資条件は厳しくなる。起業に際しては実績もないことから新規融資については厳しくならざる得ない。事業主個人が連帯保証することで融資が得やすくなる。

 零細企業においては所有と経営の分離がない上、財務会計が十分確立していない。取締役会や株主総会も実施されていない企業がかなり多い。また、事業計画も立てられない例が少なくない。個人連帯保証が禁じられることになり、審査が厳しくなることも指摘される。加えて、財産を個人に隠匿することで債務を逃れるというモラルハザードの問題もある。

 法務省法制審議会に提出しされた資料によると、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカにおいても事業主の個人保証制度が活用されている。

 結局、事業主の個人連帯保証は避けられない課題のように思われる。結局、個人保証は残しつつ弊害を防止するための方策を提案するということになるのではないだろうか。