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№2449 値引きしたのに発注がない場合

3年間契約する、次の契約するといって守らない場合
大口取引先と契約する場合、今後3年間契約するから安くしてくれとか、次の発注があるから安くしてくれとかいった交渉は普通に行われる。しかし、値引きしたものの期間が短かったり、次の発注がなかったりすることがある。その値引額を賠償してくれといっても、原則としては賠償請求できない。 
そうはいっても例外がある。契約書への明記、特別に信頼を裏切る場合がそれだ。

 

なぜ賠償請求できないのが原則なのか
商売の世界では情勢がたえず変化する。3年間続けて契約するからといっても新たな契約するかについても判断の変化があることはやむを得ないと考えられているからだ。それに、契約もないところ賠償請求を認めることに裁判官は抵抗感が強い。

 

3年購入計画がなくなっても値引き価格で仕入れさせた事例
仙台高裁の事例(R3.3.25判時2529号58頁)
  納品先の生活協同組合が3カ年、のべ1万本のLED入れ替え計画があるとの説明のもと、納入業者が価格値引きをLED販売業者に頼んだ。ところが生協の計画は立てられなかった。にもかかわらず、値引き価格で仕入れを続けたという事例だ。
 
  仙台高裁は3年計画が採用されなかった時点で事業者にその旨の説明義務があるとし、説明義務違反を認めた。その上で3カ年計画が提示されない段階で提案された代金6450円と値引き額5700円との差額750円相当額の損失があったと認定した。もっとも、売る側にも注意深くあるべきであったとして過失相殺の減額を行っている。

 

実務的な教訓
  将来購入するという見込みは見込みでしかない。多くの事例では将来見込んだ購入量が実現しなくても値引き分を請求することは難しいだろう。
  こういう場合はやはり契約上に金額決定した主な動機を記載しておくことがよいように思う。例えばこういう条項はどうだろうか。


「本売買価格は生協においてLED入れ替え計画があることを前提に合意されたものである。事情変更ある場合には買主は直ちにその旨売主に告げ、価格について再度協議しなければならない」