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№1801 下請建築業者の責任

№1801 下請建築業者の責任

 下請け業者に過失があって欠陥があった場合、たとえ下請け業者で居住者との間で契約関係になくても、賠償責任を負うというのが判例だ(最高裁H19.7.6判時1984号34頁、最高裁H23.7.21判時2129号36頁)。この判例に従えば、本来下請け業者が施主に賠償しなければならないところ、デベロッパーが代わりに払ったということになる。

 一般的には下請け業者の場合、「建物の基本的な安全性を損なう場合」には建物所有者は賠償請求できるとされている(19年判例)。さらに、「放置するといずれは」「危険性が現実化する場合」(23年判決)も賠償責任を負う。

 しかし、「基本的な安全性」とは何かはよく分からない。「危険が現実化する」とはどんな状態なのかもよく分からない。この点は建築紛争の難しいところだ。

 関連して、建築関係のデベロッパーが建物の基礎に欠陥があったとして、下請け業者に損害賠償請求した事例がある。請求額は1000万円、デベロッパーには小さな金額だが、下請業者にとっては死活問題になりかねない。

 問題の建物は地震による液状化により傾き、改めて沈下修正工事を使用としたところ、基礎工事に厚さが足りないため工事ができなかったという事例だ。デベロッパーは基礎工事に問題があると認め顧客に1000万円を支払った。そこで、デベロッパーは下請け業者が悪かったせいだというので1000万円の賠償金を求めてきた。

 この事例では、裁判所は確かに設計上予定されていた厚さに満たない部分もあるが、「将来的にみて建物の基本的な安全性を損なう蓋然性があるとまでは認められない」として、デベロッパーの請求を棄却した(東京地裁H27.6.26判時2285頁71頁)。

 つまり、「基本的な安全性」か、「危険が現実化する」かは難しい問題を含んでいて、そう簡単には判断できないということだ。この事例は建築業者が専門家の助けを借りて、建物の危険が深刻でないことを立証し、デベロッパーに勝った事例だ。

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