名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№6 がんばれ「中小企業庁」

 我が国の中小企業政策は敗戦間もない昭和23年中小企業庁の設置に始まる。中小企業庁設置法を見るとわずか5条の条文でできあがっているにすぎないが,我が国の中小企業政策の方向が凝縮されている。
 第1条には目的が記載されているが,その中で「中小企業が・・・・経済力の集中を防止し、・・・・公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、」とある。この法律は平成17年に改正されているので戦後間もないころの条文がどのようなものであるか分からないが,ここにいう「経済の集中を防止し」とあるのは独占禁止法私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)が健全な競争を通じて経済民主主義を実現するものとされていることと考え合わせて考えると意義深い。
 敗戦を迎えた我が国には少数の大財閥によって社会,経済が支配されていることがファシズムを招いた一因であるという認識があった。そのため,財閥解体政策は日本の社会経済政策の重要課題として取り上げられていた。この認識はGHQもそうだが,広く市民の間でも浸透していたと思われる。財閥は圧倒的に強く,中小企業家も含めて国民一般からみて政治や経済は遠いものではなかったのだろうか。そんな中,終戦を迎えた日本は日本国憲法が公布され,これからは国民一人一人が主人公であるという気概があふれていたように思われる。中小企業は財閥中心の経済にかわる民衆経済の担い手として育成するのだという決意が中小企業庁設置法の第1条に込められているのだろう。経済民主主義のDNAは今の中小企業庁に残っているのだろうか。そうだとしたら是非ともがんばってほしい。