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№338 中小企業憲章の問題点

№338 中小企業憲章の問題点
 中小企業家同友会では中小企業憲章制定運動を展開している。中小企業憲章は、EUの小企業憲章をモデルに作成されたものだ。その趣旨は、中小企業企業中心の経済、文化、社会を作ろうという野心的なものだ。

 確かに経済の主役を中小企業に置くというのは意味があると思う。
 個人の生活が心身ともに安定し、多様な価値観が尊重される社会を考えた場合、持続社会の形成が不可欠だ。人が交わる範囲、コミュニティとされる範囲で基本的な生活に必要なものが満足される社会が理想的だ。地域経済が発展し、一人一人が豊かになり、豊かな人々が多様な要求を満足できる社会は現代における民主主義の理想型のように思う。
 
 中小企業は雇用を確保し、地域経済を豊かにする。多様な要求を敏感に感じ取り、要求を満たしていく。企業家のアイディアに満ちた積極性は地域を活性化させるだろう。もとより現実は甘くない。しかし、理想を目指して行動することは必要なことだ。中小企業家同友会では、その国家の大目標として中小企業憲章を作ろうとしている。

 しかし、中小企業憲章は法律的に見るととても甘いように思う。というか、ほとんど法的な検討がされていないように思える。

問題1
 憲法との関係が不明確だ。中小企業憲章は憲法上のどのような価値を実現しようとしているかが不明である。

問題2 
 中小企業政策の核心となる法律である,中小企業基本法独占禁止法中小企業庁設置法との関係はどのようになっているか不明だ。これら法律の改正では不十分なのだろうか。中小企業憲章ができると、各法律のどこがどのように改正されるのだろうか。あるいは、現在の運用はどのように変化するだろうか。

問題3
 中小企業憲章では、経済ばかりか、文化、社会のあり方も変えることを目指す。伝統的な意味での中小企業政策からはみ出した部分がある。例えば,中小企業憲章は教育まで統制することになる。しかし,そこまで統制することは誤りではないか。つまり、教育は教育の基本法によって統制されるべきであるし、環境は環境基本法のによって統制されるべきだ。中小企業憲章はこうした問題にどのように答えるのだろうか。