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№1982 試用期間でも解雇できません

№1982 試用期間でも解雇できません

試用期間に対する大きな誤解
 採用時、3ヶ月間試用期間とするという条件をつけている場合が多い。少なくない社長は試用期間内はいつでも正式採用拒絶できると思っている。しかし、これは大きな誤りだ。

 試用期間とはいっても雇用契約は成立している。雇用契約がある以上、労働契約法16条の適用があり、経営者側に正当事由がなければ解雇は無効となる。

試用期間という言葉にはそれなりに意味はあります
 しかし、「試用期間」という用語には試してみて、使えなかったら正式採用しないという意味合いも本来含まれている。その点では確かに、試験採用期間満了後とは事情が異なる。試用期間は正式採用の段階より、解雇は容易であることはまちないない。

最高裁判所の考え方
 最高裁はこの点、解約権が留保されているというような表現をする。つまり、解約権が保留されているとみている。この「留保解約権」の行使は、採用時には分からなかった事情が採用後使用期間中に初めて分かったような場合に解約権を行使できるという。

三菱樹脂事件最判S48.12.12)ではこんな風に述べている。
 企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができる

判例の立場はかなりきびしい
 この解約権の行使はかなり制限があるとみなければならない。
 採用前と採用後とでは雇用契約有無という決定的な違いがある。最高裁はこの違いを非常に重視しており、採用後の解雇はかなり制限されているとみなければならない。

顧問弁護士によく相談しておくこと
 採用時に何らかの不都合、たとえばよく入力を間違えるとか、反抗的であるとか、身だしなみが悪い、さらには遅刻が多いとかとかいろいろあるかもしれないが、使用期間中であれ、本人に改善の機会を与えなければならないし、必要な弁明の機会を与えなければならない。

  ① 不採用の事情を客観的に根拠を持って述べる必要がある
  ② その事情が採用を拒否するほど重大な内容でなければならない
  ③ 本人に弁明を改善のチャンスを与えなければならない。
  ④ ①、②の事情が採用時には分からなかったものでなければならない

 これらの判断はかなり難しい判断なので、顧問弁護士の助言などを受けながら進める必要があることは論を待たない。解雇無効、地位保全の訴訟を起こされ、敗訴した場合のリスクは企業にとって本当に大きい。

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