№1923 リスクゼロなんてない
1. リスクゼロ、NGの誘惑
ビジネス法務4月号に著作権とリスクの関係の記事が掲載されている。
DeNAがグーグル検索結果上位獲得のためにでたらめな記事や著作権違反記事を掲載していたことに言及し、法的リスクに対して「絶望的な未成熟」と断じている。その上で、我々法律家はリスクに対して「NGの誘惑」とビジネスを萎縮させたくないという葛藤に悩むことになる。
2. 残念な弁護士とリスク対応
企業法務を実践する場合、この葛藤は著作権だけの話に収まらない。法律相談業務に常につきまとう問題となる。たとえば、相手に対し攻撃をしかける場合、勝つか負けるかと言ったリスクは常に判断を迫られることになる。ただ「五分五分です。」という回答は弁護士としては最低ランクだ。
3. リスク(不確定性)の確定と弁護士の対応
法的判断にリスクが伴う場合、私たちはリスクを確定させる作業を進める。このリスクの確定というのはかなり専門性が高い。弁護士の能力も差が大きい。
この確定という作業は法的に起こりうる現象のはばを示すことになる。
行動する場合、行動しない場合、それぞれに分け、起こりうる最大限の危険と、起こりうる最大限の利益とを想定することになる。
このリスクの幅はかなり複雑な経路をたどる。
Aが起これば、BCDの可能性が存在し、さらにその向こうにもいろいろ枝分かれしてしまい、訳が分からなくなってしまう。この時に核心となる要素をいかに単純化して3つか4つ、せいぜい5つの選択肢に整理するところが弁護士の能力と言うことになる。これがリスクの確定、つまり、可能性ある特定のストーリーのテーマを少ない言葉で表現し、わかりやすい選択肢にするという作業だ。
4. 優秀な弁護士はリスクの修復を説明する
リスクの確定は依頼者が選択できるようにするために実施される。
私たちの世界では説明と同意、インフォームドコンセントと呼ばれる作業だ。
しかし、まだ足りない。起こりうるリスクに対して、どのように弁護士として対応していくか、そこが示される必要がある。交渉なのか、裁判なのか、あるいは別の手段なのか、状況に応じて異なる。
この作業は実は、依頼者と案件処理に対して責任を負担する作業だ。こうなったときにはこうしましょうと対応し、依頼者は「この弁護士は最後までいっしょにやってくれるんだな」と安心感を持ってもらうことになる。
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