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№1832 他にまねできない強み

№1832 他にまねできない強み

 「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済社)の読了もだんだん近づいてきた。今日は「他にまねのできない強み」がテーマだ。

 事業戦略ではコンセプトは必須のアイテムだ。全体を貫き通す基本的な価値観がないと整合性がとれず、事業運営はきわめて非効率になる。

 たとえば「お客様の困ったを解決する」というコンセプトがあれば、「困った」を探し出す、「困った」に対する提案をする、「困った」を解決するというプロセスで営業から製造、販売に至るまで組織活動は一貫性をもって統合されていくだろう。

 一定のコンセプトをまねしたり、何か特別なシステムをまねしたりすることは可能だろう。スターバックスのくつろいだ空間をまねることはできても、それだけでは勝てない。何か特別な工夫が必要だ。

 筆者は「部分非合理を全体合理性に転化する」という考えを提案している。
 これは「急がば回れ」と言っているようなものだ。たとえば、アマゾンの場合、インターネットによって直販するのだが、これはどの企業もできる。アマゾンは「顧客の判断を助ける」というコンセプトを持っている。コンセプト自体は誰でも言える。しかし、アマゾンはそのために判断を助けるためのソフトウェアの開発やサイトの仕組みに投資した。一つのものを買えば関連して商品を紹介する。他の顧客の反応を示すなどいろいろある。

 さらに、アマゾンは倉庫、物流システムに力を入れた。
 アマゾンは「在庫こそ最大の資産」と考えた。顧客が欲しい物を手に入れる。普通の店舗では手に入らないものもインターネットなら手に入る。ロングテールと言われる戦略だ。そのためには倉庫が必要となる。インターネット通販は本来、店舗などへの投資なくともお手軽に事業が起こせるところが魅力なのだが、アマゾンは倉庫を必要とした。ここは言わば「部分不合理」だ。しかし、ロングテールという戦略全体から見れば「合理的だ」。

 アマゾンは流通システムにも力を入れている。流行の本が翌日手に入る、わざわざ本屋に買いに行かなくても手に入る、これがインターネット販売の魅力となると考えたのだ。これも、本来インフラとは無関係なインターネット事業から見れば、「部分不合理」だ。しかし、事業全体から見れば合理性を持つ。

 こうして、インフラに投資したアマゾンは競争力を持続させるのだが、他社がまねしようにもまねできなくなっている。それは、倉庫、物流に投資するには巨額で有り、かつ、機能するのに時間がかかり、さらには成功するかどうかわからないからだ。

 このように真の「競争力」の源泉は、コンセプトを支えるしくみ、他社が決してまねできない「障壁」が重要だということになる。顧客を獲得するための特別な仕組みが事業成功の源泉ということだ。

 日本の中小企業は他にまねできない高い技術力によってニッチを獲得している。個人の職人芸も重要だろう。熟練までの教育時間が必要だろうし、熟練した職人が尊敬されるという文化も必要だろう。熟練を支える機会、工具、治具も重要だし、材料の選択も必要だろう。工場だって、振動を防ぐために特別な工夫が必要かもしれない。こうした、総合的な工夫は一見無駄のように見える地道な工夫も「高技術」というコンセプトから見れば必要なことだ。これが、他にまねできない強みを持っている。

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